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フジバカマ(藤袴)   

商品写真
上・中・中:下関 火の山 蜜を吸うアサギマダラ
下:平城宮跡

フジバカマ(藤袴) Eupatorium fortunei  Turczaninov
真正双子葉植物Eudicots>中核真正双子葉植物Core Eudicots>キク類Asterids
 >キキョウ群Campanulids
   キク目Asterales
     キク科Asteraceae   ヒヨドリバナ属Eupatorium

秋の七草の一種

生薬名  :ランソウ(蘭草)
利用部位 :全草
利用   :薬用 香草
名前の由来:筒状の淡紫色の花を袴に見立て、花の色とあわせて藤袴

「萩が花 尾花 くず花 なでしこの花 女郎花 また藤袴 あさがおの花
万葉集の山上憶良の歌で、秋の七草の一種に挙げられるほど昔から、日本人に親しまれてきた。

花期は8〜9月。散房状に淡い紫紅色の小さな花をつける。花は傘状に多数の頭花が集まったもの。1つの頭花には淡紫色の筒状花が5個集まっている。花から細く白い伸び出ているのは筒状花の雌しべの花柱で、花柱が2本に分岐している。フジバカマに良く似た花に、同属の在来種ヒヨドリバナがある。フジバカマの葉は対生し上部の葉は深く3つに裂けているので見分けられる。

元々は奈良時代以前に中国から薬用として渡来したとさたものが帰化し、野生化したと言われている。近年開発などで、自生しているのは殆ど観られない。

生のままでは香らないが、葉をもんだり、乾燥したりすると特有のよい香りがする。茎や葉に含有されている、クマリン配糖体が加水分解されて、オルト・クマリン酸が生じるため、桜餅の葉のような芳香(クマリンの香り)を放つ。そのため中国では香草、香水蘭、蘭草とも言い、唐代には髪や衣服など身に着けて香りを楽しんだり浴剤に利用してきた。

夏から秋の開花期、地上部を刈り取り天日乾燥する。利尿、止渇、解熱、黄疸、などに薬効があり、糖尿病、神経痛などに用いられる。また皮膚のかゆみや湿疹には浴剤として使うと効果的

フジバカマは海を渡る蝶、渡りをする蝶、アサギマダラの吸蜜植物。

アサギマダラは夏、北上し涼しい信州などの高地で過ごし、秋になると南下し、沖縄、台湾にまでゆくという。
アサギマダラの寿命は短く世代を通じて、渡りを繰り返す。渡りのルートはほぼ決まっているようで、途中必ずヒヨドリバナ属のフジバカマ、ヒヨドリバナなどに集まり、蜜を吸う。近年、フジバカマなどを植えアサギマダラの飛来するのを楽しんでいる様子が飛来ルートで見られる。下関、火の山でも南下する蝶の飛来を待つようにフジバカマが何百鉢と並べられ、実際に蝶が数多く飛来していた。

蝶はどのようにして、数多くの自然の花の中から、自分たちの吸蜜する花を見つけるのだろうかと、不思議なその習性と生命力には感動する。

―下関市 火の山―
本州最西端の関門海峡に面した標高268.2 mの小高い山。山麓の“みもすそがわ町”からロープウエイも運行されている。山頂からは関門海峡や関門大橋が眼下に望める風光明媚な景勝地。しかしこの場所は古代から外敵の来襲の急を知らせる“のろし台”が置かれていたことから火の山の名前があるぐらい防衛の最前線であった。近世に入ってからも明治時代には砲台が置かれ第二次世界大戦まで陸軍の要塞が置かれていた。その名残が、山上に砲台跡の施設にみられる。
関門海峡は壇の浦の合戦が行われた海でもあり、二位の尼が孫にあたる安徳天皇と共に入水する際に詠んだ辞世の句「今ぞ知るみもすそ川の御流れ 波の下にも都ありとは」の碑が建てられている。幕末には長州藩が、関門海峡を通る外国船を砲撃し馬関戦争の場となった砲台などがあり古今を通じて、地理的に戦の重要な拠点だった。

参考文献
    ・朝日百科 世界の植物 (朝日新聞社)
    ・最新生薬学 刈米達夫著  (広川書店)
    ・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著 (広川書店)
    ・万葉の花 松田修著 (保育社)
    ・ヤマケイポケットガイド ハーブ 亀田竜吉(山と渓谷社)
    ・山渓名前図鑑 野草の名前 夏 高橋勝雄著 (山と渓谷社)
    ・山野草ハンドブック 伊沢一男(主婦の友社) 
    ・植物分類表  大場秀章 編著 (アボック社)


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