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ベラドンナ 

商品写真
上・中:日本新薬山科植物資料館
下・下:大阪薬科大学薬用植物園 青い実は熟すと黒くなる

ベラドンナ Atropa  belladonna Linne
真正双子葉植物Eudicots>中核真正双子葉植物Core Eudicots>キク類Asterids>シソ群Lamiids
   ナス目Solanales
     ナス科 Solanaceae オオカミナスビ属 Atropa


ベラドンナエキスの起源植物。
植物起源医薬品:アトロピン、スコポラミン(副交感神経遮断薬)の製造原料。

生薬名  :ベラドンナコン(ベラドンナ根)
利用部位 :根茎   
利用   :ベラドンナエキスの製造原料  日本薬局方生薬
名前の由来:イタリア語で bellaは美しい、donnaドンナは貴婦人に対する敬称で「美しい淑女」

      の意味。瞳の大きいほうが美しいと感じた女性が目をパッチリさせるのに使用した
      ことに由来する。


ヒマラヤ山系からコーカサス、イラン、小アジアからヨーロッパに野生し、欧米各地で薬用に栽培する多年草。わが国ではベラドンナエキスの製造原料としての需要がある。

草丈1m位になり、茎は二股に分岐する。花は下を向いた釣鐘状の筒型で中が紫褐色。縁は5裂し外側にやや反曲する特徴のある形をしている。

根をベラドンナ根。葉をベラドンナ葉といい、いずれもアルカロイド、ヒヨスチアミン アトロピン、スコポラミン、ベラドニンを含み、主としてベラドンナエキスの製造原料にするほか鎮痛、鎮痙薬、アトロピン、スコポラミン(副交感神経遮断薬)にする。

副交感神経はアセチルコリンが神経伝達物質。この働きを 抑える(抗コリン作用)ことは結果として、交感神経を優位にする。交感神経優位になると瞳孔が大きく開かれる。中世ヨーロッパの貴婦人たちもこうしたこと事を知っていたのだろうか。


ベラドンナは幕末におきたシーボルト事件とも関連が深い。
幕府の御典医だった眼科医、土生玄碩(はぶ げんせき)はシーボルトが瞳孔を開かすのに使っていた薬を熱望し、長崎のシーボルトを訪ね願い出た。分けてもらった薬を使い切ったため再度、分与を求めたところ、「日本にはベラドンナのかわりとなるハシリドコロが自生している。」と教えてもらい、ハシリドコロを用い白内障の手術を成功させるなど、日本の眼科の発展に貢献した。その代わりに葵の紋服を提供したことが後に発覚し罪に問われた、という曰くがある。眼科の発展には貢献したが、此のことは、後のシーボルト事件に発展するなど関係者の不幸の元ともなった。
現代でもベラドンナの成分アトロピンは点眼薬として、瞳孔を開かす薬として医療の場で使われている。

属名Atropaはギリシャ神「運命の三女神」の三女アトロポスに因む。アトロポスは命の糸を切る、寿命を決める女神といわれ、それだけベラドンナの作用が激しく有毒なことを示している。全草有毒だが特に根は毒性が強い。

成分
 ・アルカロイド:ヒヨスチアミン アトロピン、スコポラミン、ベラドニン
 ・クマリン類:スコポレナン、スコポリン
 ・タンニン:8〜9% など

花の色が異なるキバナベラドンナ(黄花ベラドンナ)
  Atropa  belladonna Linne var .lutea Doell
     ナス科Solanaceae オオカミナスビ属Atropa

     ベラドンナ 黄
     上・下Photo:大阪薬科大学薬用植物園 キバナベラドンナ
     ベラドンナキバナ

   使用部分 :根、葉
   利用   :薬用
   名前の由来:花が黄色のベラドンナ

   普通ベラドンナの花は薄紫だが、変種の黄色の花もある。
   根や葉はベラドンナと同様の成分を含み、鎮痛、鎮痙薬にされる。

参考文献
  ・朝日百科 世界の植物 (朝日新聞社)
  ・第15改正 日本薬局方解説書 (広川書店)
  ・最新生薬学 刈米達夫著  (広川書店)
  ・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著 (広川書店)
  ・生薬単 原島広至著    (株式会社エヌ・ティ・エス)
  ・植物分類表 大場秀章 編著 (アボック社)


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