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オタネニンジン(御種人参)

商品写真
上:武田薬品 京都薬用植物園 赤く実った実
下3枚:島根県大根島の栽培風景

オタネニンジン(御種人参)Panax ginseng C.A.Meyer.  
真正双子葉植物Eudicots>中核真正双子葉植物Core Eudicots>キク類Asterids
>キキョウ群Campanulids
   セリ目Apiales
     ウコギ科 Araliaceae トチバニンジン属 Panax
 
高貴薬 朝鮮人参の基原植物

生薬名   :ニンジン(人参)、チョウセンニンジン(朝鮮人参)、
       コウライニンジン(高麗人参)とも

利用部分  :根
利用    :日本薬局方生薬、漢方処方生薬、民間薬、健康食品
名前の由来 :根の形が手や脚のように人の形をしていることに由来し「ニンジン」に。  
       栽培奨励のため、江戸幕府が各藩にニンジンの種子を分与したことから
      「オタネ(御種)」の名 がつけられた。

原産地は中国の遼東から朝鮮半島にかけての地域といわれ、中国東北部やロシア沿海州にかけて自生している。高さ50〜80cmぐらいの多年草。茎は1本真っ直ぐに立ち上がり葉を輪生させる。長い茎の先に五出掌状複葉の葉をつける。初夏、茎の先に散状花序を作り小さな白色の花を咲かせる。秋、赤い実になる。

薬用にするニンジンは、数年を経た白色の肥大した根で枝分かれする。枝分かれした様子がどことなく人のような形に見えることから、ニンジン(人参)の名がつけられた。

数ある漢方薬のなかでも古くから高貴薬として有名で、古来からニンジンの薬効は、いろいろ神秘的に伝えられてきた。野生種は極めて高価なため、主に栽培が行われている。朝鮮では古くから栽培が行われ、高麗人参、朝鮮人参の名で知られ、今では栽培人参の通称名ともなっている

日本には自生せず、江戸時代には全て対馬藩を介して輸入に頼っていたため大変に高価な生薬で、庶民には高嶺の花だった。日本における栽培は、3代将軍家光の頃から試みられていたが、うまくいかなかった。

江戸享保年間、8代将軍吉宗は朝鮮人参、その他の薬草の国産化を図り栽培を奨励、幕府直轄で栽培が試みられた。1728年、行政業務として人参の種子を日光の御薬園で播種、その栽培に成功した。

その後、幕府は増殖した種子を各大名に分与し、栽培奨励に努めたため朝鮮人参には、オンタネ(御種)オタネ人参の名がつけられた。諸大名家により栽培が始められたが、結局信州、会津、雲州(出雲)が産地として残り、現在も出雲大根島(島根県)、信州丸子(長野県)、会津若松(福島県)の3県で栽培されている。


人参の栽培は非常に難しく排水の良い土壌で、しかも乾燥状態で育てる。直射日光にも非常に弱く、わらなどの日覆やヨシズで覆い、北向きの弱い光で栽培する。
植えつけてから3〜6年でやっと収穫が出来る貴重な生薬。しかも地中のミネラルなどの栄養分、土地のエネルギーを吸い上げてしまうため、一度収穫すると、その土地では15〜20年間は栽培できず、土地を変えねばならないそうだ。

写真は島根県の大根島の人参の栽培風景。ブランド名、雲州人参として大切に育てられている様子が伺える。
この島は江戸時代より人参栽培が盛んで、松江藩の重要な財源になっていた。あまりに高価なため、この島で栽培している事実を隠し、大根を栽培しているのだという事にして、この島を「大根島」というようになったそうだ。現在も人参と牡丹の栽培で有名な島。

人参は加工方法により名前が異なる。細根を取り除いた生根のそのまま、あるいは皮をはいで日なたで乾燥したものをハクジン( 白参)、生干人参、細根を取り除き軽く湯通ししたものをニンジン(人参)、オタネニンジン(御種人参)といい、蒸して乾燥したものをコウジン(紅参)という。取り除かれた細い根もヒゲ人参として利用される。
なお野菜のニンジンはセリ科であり、本種の近類種ではない。
利用成分と薬効
  ・サポニン:ジンセノシド(別名ギンセイサイド) (ginsenosideR0Ra〜Rh) 
  ・精油 :パナセン、パナキシノールなどの精油を含み独特の香気がある。
  ・結晶成分としてβ-シトステロールならびにその配糖体など
  ・リグニンなどの脂溶性成分、
  ・降圧作用を示すペプチドグリカン、choline、ヌクレオシド、非タンパク性アミノ酸、
    ビタミンB群
などが知られている。
これらの成分から血糖降下作用、強心・興奮作用、肝機能増強、低血圧症に有効であることが知られている。


 ・漢方処方例   
  漢方では虚弱体質、肉体疲労、病中病後、胃腸虚弱、食欲不振、血色不良、冷え性などの
   諸症状の改善に
  滋養強精、健胃整腸、鎮吐、止瀉剤 など多くの処方に配合(通常、白参を用いる)
   ・小柴胡湯   (しょうさいことう)
   ・十全大補湯  (じゅうぜんだいほとう)
   ・補中益気湯、 (ほちゅうえっきとう)
   ・白虎加人参湯 (びゃつこかにんじんとう)   
   ・柴胡桂皮湯  (さいこけいしとう)
   ・人参湯    (にんじんとう)
   ・人参養栄湯  (にんじんえいようとう)
   ・六君子湯    (りっくんしとう)  などその他多数
 ・薬膳料理・薬用酒
 ・薬用茶

参考文献
    ・朝日百科 世界の植物 (朝日新聞社)
    ・第15改正 日本薬局方解説書 (広川書店)
    ・最新生薬学 刈米達夫著  (広川書店)
    ・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著 (広川書店)
    ・生薬単 原島広至著    (株式会社エヌ・ティ・エス)
    ・日本薬草全書 水野瑞夫、田中俊弘共著(新日本法規出版)
    ・漢方生薬学 木村孟淳著(不知火書房)
    ・植物分類表大場秀章 編著 (アボック社)

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