ヒシ（菱）

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上：武田薬品　京都薬用植物園
中･下：大阪薬科大学薬用植物園　ヒシの花と裏面の浮嚢

ヒシ（菱） Trapa japonica Flerov　
　真正双子葉類Eudicots ＞中核真正双子葉類Core Eudicots 　　　　
　　　フトモモ目Myrtales
　　　　　ミソハギ科Lythraceae　(←ヒシ科Trapaceae）　ヒシ属Trapa

生薬名　　：リョウジツ（菱実）ヒシカク（菱角）
利用部分 　：果実
利用　　　：食用、薬用
名前の由来 ：葉の形がひし形であることから

全国の池や沼、よどんだ川に自生する1年草の水草。水底の泥の中から芽を出し長い柄を水面まで延ばし放射線状にヒシ形の葉を広げる。
膨らんで浮き袋の役目をする浮嚢を葉柄に作る。夏６月頃から１０月にかけて、葉の付け根から花茎を伸ばし水上に直径１ｃｍ程の白い４弁の花を次々に咲かせる。花は受精後、水中に沈み結実する。

がく片２個は脱落し２個が左右斜めに鋭く尖った刺針になる。刺針2本がヒシ。４本で大きいのがオニビシの実。また４本で小さいのがヒメヒシ。一般に針が２本の物が４本より進化した種類になっている。株を裏返すと若い実がついている。

実は豊富な澱粉、タンパク質を含んでいて古来から食用にされた。古事記、万葉集に詠われるほど昔から日本人に親しまれてきた植物。若い緑色の果実は剥いて生でも食べられる。クリのような味がするので「ミズグリ」の名がある。

昔のアイヌの人たちもヒシの実を重要な植物性の食物として利用していた。アイヌの伝統的な祭りにペカンペ祭りがある。ペカンペとはヒシの実を指し、ヒシの実が豊富に実ったことに感謝する感謝祭りを行い、この祭りの後、小船を湖に浮かべ本格的にヒシの実の収穫を始めるそうだ。

栄養価の高い果実は滋養強壮に、消化促進に、解熱薬、婦人薬としても利用される。また民間では胃がんの薬としても用いられる。

主な成分

　　　デンプン、タンパク質、ステロール　β-シトステロール
主な効能

　　　滋養強壮、消化促進,　健胃、解熱、民間薬として胃がんの薬に用いられる

参考文献
　　・朝日百科　世界の植物　（朝日新聞社）
　　・薬用植物学各論　木村康一・木島正夫共著　（広川書店）
　　・山渓名前図鑑　野草の名前　夏　高橋勝雄著　（山と渓谷社）
　　・万葉の植物　松田　修著　（保育社）
　　・山野草ハンドブック　伊沢一男（主婦の友社）　
　　・野草図鑑　秋　（北隆社）
　　・美味しい山菜　おくやまひさし（文一総合出版）
　　・植物分類表　大場秀章　編著　（アボック社）

(コメント）
これ迄、植物を系統的に分類する方法ではシダ植物と種子植物、裸子植物と被子植物、単子葉植物と双子葉植物というような方法が親しまれてきたが、
近年、ＤＮＡ配列に基づく系統関係から、従来とは異なる配列がとられるようになった。
ＡＰＧによる大分類で、１９９８年に最初の系統的分類ＡＰＧⅠが発表されされてから改定が加えられ、現在は２００９年のＡＰＧⅢが発表されるに至っている。
その結果ヒシ科はミソハギ科に統合されヒシ科はなくなった。

ヒシ（菱）

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