チョウセンアサガオ（朝鮮朝顔)

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上・中：日本新薬　山科植物資料館
下：青洲の里　春林軒　庭の蒴果　
下：華岡青洲像　

チョウセンアサガオ（朝鮮朝顔) Datura metel 　Linne
真正双子葉植物Eudicots＞中核真正双子葉植物Core Eudicots＞キク類Asterids＞シソ群Lamiids
　　　ナス目Solanales
　　　　　ナス科 Solanaceae　チョウセンアサガオ属 Datura

別名：キチガイナスビ、マンダラ（曼陀羅華）

生薬名　　　：ダツラ、マンダラ葉
利用部分　　：葉、種子
利用　　　　：製薬原料（アトロピン、ヒヨスチアミン）
名前の由来　：チョウセン（朝鮮）の名が付くが必ずしも原産地を意味するものではない。外国か

　　　　　　　ら渡来した物は朝鮮（チョウセン）や唐（カラ）の名を付ける傾向とアサガオに似
　　　　　　　た１日花を咲かせることから

インドなど熱帯アジア原産、日本へはヨウシュチョウセンアサガオ（洋種朝鮮朝顔)より早く江戸時代前期に中国経由で薬用として渡来した。チョウセンアサガオは江戸時代後期、紀州の華岡青洲が外科手術のための麻酔薬を考案する際に用いた薬草として有名だ。
華岡青洲が乳がんの手術をしたさい、麻酔薬に使った植物として、日本麻酔科　学会のロゴマークのデザインなっている。寒さに弱く、現在は一部で栽培されているのみで、野生はしていない。

葉はナスに似た卵形で波縁。夏から初秋にかけて大型の白く長いロート状の花を上向きに咲かせる。花が散ってから後、表面には短い棘が密集している直径３～４ｃｍ程の球形の蒴果が実る。熟すと縦に４裂する。中に淡黄色扁平のゴマに似た大きな種子が詰まっている。

種子にはスコポラミン、ヒヨスチアミン、アトロピンなどのアルカロイドを含んでいる。
副交感神経抑制作用をもち、作用は峻烈。これらの成分は鎮痛、鎮痙剤として医療の場で広く応用されるが多くは劇薬に指定される。

華岡青洲に関しては、同じく和歌山出身の作家、有吉佐和子作「華岡青洲の妻」に登場する。舞台に、映画に、ドラマにされているので、乳がんの手術を世界初の全身麻酔科下で行なった業績は広く知られている。

青洲は麻酔薬「通仙散（つうせんさん）」を考案。通仙散にはチョウセンアサガオ（曼陀羅華）ウズ（烏頭）、ビヤクシ（白芷）、トウキ（当帰）、センキュウ（川芎）が用いられた。麻酔薬のみならず、漢方処方では「紫雲膏」「中黄膏」「十味敗毒湯」なども考案している。それらの処方は現在も用いれ治療に貢献している

青洲の里（紀の川市）にある華岡青洲像と活物窮理（かつぶつきゅうり）の碑

和歌山県紀の川市では、郷土の偉人、青洲の業績を称え青洲の里として往時、青洲が治療や門弟の育成にあたった春林軒を復元している。青洲の里の入り口に坐像と漢詩の一節の碑が建立されている。青洲は名医であるとともに漢詩をたしなむ教養人でもあった。
活物窮理の前には内外合一があり「内外合一　活物窮理」は青洲の医療に対する理念、哲学を表す言葉

合水堂碑

大阪中ノ島に、近代日本の礎を築いた人材を多く輩出した緒方洪庵の滴塾がある。同じ中之島の土佐堀川をはさんだ対岸に華岡青洲の末弟華岡鹿城（はなおかろくじょう）が和歌山、春林軒の分塾「合水堂（ごうすいどう）」を創設した。２つの私塾はそれぞれ特色ある教育を行い、一時代を築いた。滴塾は大阪大学に引き継がれているが、合水堂は今は見られない。
合水堂は鹿城の没後、青洲の弟子であり娘婿の、南洋が合水堂を継ぎ、多くの門弟を育成した。その門弟の数1780年から1882年の間、全国各地から2200人に及び、その半数が大坂の合水堂で学んだそうだ。

２０１５年華岡青洲、華岡鹿城の子孫と日本医史学会、日本麻酔科学会の関係者が集まり所縁の地、中ノ島に「合水堂　華岡流外科顕彰碑」と刻まれた顕彰碑が建立され、その業績を称えている。（場所は中ノ島公園内にあり、前に東洋陶磁美術館がある。）

　　　　　Photo：大阪中ノ島　合水堂碑文
　　　　　

　　　　　Photo：大阪中ノ島　碑文裏面

参考文献
　　　・朝日百科　世界の植物　（朝日新聞社）
　　　・最新生薬学　刈米達夫著　　（広川書店）
　　　・薬用植物学各論　木村康一・木島正夫共著　（広川書店）
　　　・花と樹の事典　木村陽一郎　監修　　（柏書房）
　　　・「合水堂　華岡流外科顕彰碑」碑文
　　　・植物分類表　大場秀章　編著　（アボック社）

チョウセンアサガオ（朝鮮朝顔)

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