シロバナヨウシュチョウセンチョウセンアサガオ(白花洋種朝鮮朝顔)

商品写真
上:武田薬品 京都薬用植物園
下:大阪薬科大学薬用薬用植物園 棘のある実      

シロバナヨウシュチョウセンアサガオ(白花洋種朝鮮朝顔)
      Datura Stromonium Linne
真正双子葉植物Eudicots>中核真正双子葉植物Core Eudicots>キク類Asterids>シソ群Lamiids
   ナス目Solanales      
     ナス科 Solanaceae チョウセンアサガオ属Datura

生薬名  :ダツラ、マンダラ葉
利用部分 :葉、種子
利用   :製薬原料(アトロピン、ヒヨスチアミン)
名前の由来:チョウセン(朝鮮)の名が付くが必ずしも原産地を意味するものではない。
      外国から渡来したものは朝鮮(チョウセン)や唐(カラ)の名をつける傾向がある
      ためとアサガオに似た1日花を咲かせることからの名。

アメリカ大陸が原産で明治のはじめに薬用の目的で渡来したが、種子が自然逸脱し今では本邦各地に帰化、野生化する1年草の有毒植物。シロバナヨウシュチョウセンアサガオは名のように花は白色、茎は緑色。近縁種のヨウシュチョウセンアサガオの花は淡紫色、茎も紫色で区別できる。葉はナスに似た卵形、長卵形、または皮針形、長さ10〜25cm。幅5〜15cmと大型。先端は鋭く尖り基部はくさび状で葉の縁は数個の大きく湾入する鋸歯を持つ。共に欧米では薬用に栽培される

夏から初秋にかけて大型の白く長いロート状の花を上向きに咲かせる。花が散ってから後、表面には長く鋭い棘が密集している直径3〜4cm程の楕円形球形の実がなる。熟すと開裂する。中に黒色粒状の種子が詰まっている。種子にはスコポラミン、ヒヨスチアミン、アトロピンなどのアルカロイドを含んでいる。
副交感神経抑制作用をもち、作用は峻烈。これらの成分は鎮痛、鎮痙剤として医療の場で広く応用されるが多くは劇薬に指定される。


近縁種に、熱帯アジア原産でわが国にヨウシュチョウセンアサガオより早くに渡来したチョウセンアサガオ(Datura alba Nees)がある。チョウセンアサガオは江戸時代後期、紀州の華岡青洲が外科手術のための麻酔薬を考案する際に用いた薬草として有名だ。

華岡青洲に関しては、同じく和歌山出身の作家、有吉佐和子作「華岡青洲の妻」に登場する。舞台に、映画に、ドラマにされているので、乳がんの手術を世界初の全身麻酔科下で行なった業績はひろく知られている。
青洲は麻酔薬「通仙散(つうせんさん)」を考案。通仙散にはチョウセンアサガオ(曼陀羅華)
ウズ(烏頭)、ビヤクシ(白芷)、トウキ(当帰)、センキュウ(川芎)が用いられた。麻酔薬のみならず、漢方処方では「紫雲膏」「中黄膏」「十味敗毒湯」なども考案している。それらの処方は現在も用いられ治療に貢献している

華岡青洲像と活物窮理(かつぶつきゅうり)の碑


     華岡青洲
Photo :青洲の里(和歌山県紀の川市)華岡青洲像と碑

和歌山県紀の川市では、郷土の偉人、青洲の業績を称え青洲の里として往時、青洲が治療や門弟の育成にあたった春林軒を復元している。青洲の里の入り口に坐像と漢詩の一節の碑が建立されている。青洲は名医であるとともに漢詩をたしなむ教養人でもあった。
活物窮理の前には内外合一があり「内外合一 活物窮理」は青洲の医療に対する理念、哲学を表す言葉として刻まれている。

参考文献
  ・朝日百科 世界の植物 (朝日新聞社)
  ・最新生薬学 刈米達夫著  (広川書店)
  ・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著 (広川書店)
  ・花と樹の事典 木村陽一郎 監修  (柏書房)
  ・世界を変えた薬用植物 ノーマン・テイラー原著 難波恒雄・難波洋子訳注


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