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チョウジ(丁子)

商品写真
Photo:武田薬品 京都薬用植物園     

チョウジ(丁子)Syzygium aromaticum Merrill et Perry (Eugenia caryophyllata Thunberg)
  真正双子葉類Eudicots >中核真正双子葉類Core Eudicots
   フトモモ目Myrtales
    フトモモ科 Myrtaceae  フトモモ属 Syzygium

香辛料 クローブ(Cloves)

生薬名  :チョウジ(丁子)、チョウコウ(丁香)
利用部位 :開花直前の青い花蕾を筒状の花床と”がく”を共に摘み取り乾燥
利用   :日本薬局方生薬、香料、チョウジ油原料、チョウジ末原料、ワニリン合成原料
名前の由来:花蕾が釘に似ているため、中国でクギを表す丁の字がもちいられた。
       フランス語でもクギの事をclouという。
      種小名のaromaticumはギリシャ語アローマ「香料、薬味、スパイス」から。

インドネシアのモルッカ諸島原産の常緑小高木。モルッカ諸島(現在はマルク諸島)は、インドネシアのスラウェシ島とニューギニア島にはさまれた赤道直下の海域に点在する島々のことで、古くから香料の産地で知られている。香料諸島の別名があるほどで、チョウジ、ニクズク(ナツメグ)もこれらの島でのみ生育していた。大航海時代、コショウ、ニクズク同様盛んに貿易が行われた。

最初はポルトガルがついでオランダが産地のモルッカ諸島を支配した。1606年以降これらの島を領有したオランダ政府はニクズクともに、専売制をしき独占貿易を行い、他所での栽培を禁じていた。1788年英国がマレー半島のペナン島を領有して以来、密かに持ち出され栽培に成功し優良品を産出するまでになり、現在もペナン島産が最上と評価されている。アフリカ諸国でも栽培が始まり、現在はアフリカのタンザニア、ザンジバル、スリランカ、など赤道周辺国で多く栽培されている。

紀元前には中国に、また1世紀ごろにはインドを経て西ローマに伝えられ、日本にもかなり古い時代に伝わったようだ。
正倉院御物の中にもチョウジの実物がある。源氏物語にも丁子染めの記述があり、当時は薬用としてよりも装飾、薫香、防黴、防虫、染色などが主な用途だったようだ。


樹高は10m以上になる常緑高木。葉は対生、長楕円形〜ひ針形、全縁、革質で多数の油点がある。枝先に集散花序をつける。花は筒状の花床とその上端に4枚のがく片があり、頭部は球形に巻いた未開の花冠を形成する。花弁は4枚、開花と共に脱落し多数の雄しべが突出する。子房は花床内部に入っている。薬用や香料にするためには、開花する前の青い蕾をガクや花床と共に摘み取り乾燥させる。

精油成分を含み、薬用としては芳香薬、芳香性健胃薬として胃腸薬に多く用いられる。
漢方では吃逆(しゃっくり)抑制薬とみなされる処方、その他少数の処方に配合される。
現在、花蕾、葉を水蒸気蒸留して得るチョウジ油は、日本薬局方に収載され、精油オイゲノール
80%以上を含むものと規定される。局所麻酔作用、鎮痛作用、殺菌作用があるので、口腔内殺菌剤として虫歯の局所麻酔、鎮痛をかねて滴剤として用いる。
一般には香辛料として肉料理や、焼き菓子など料理に使うのがよく知られている。


成分 
 ・精油:オイゲノール、オイゲノールアセタート、チャビコール、バニリン、フムレン、
     βカリオフィレン
 ・タンニン:オイゲニイン、
 ・その他:脂肪油、蝋 オレアノール酸
用途
  ・クローブとして料理、お菓子の香辛料に
    バニラのような甘い香りと辛さ、渋さが混ざった刺激的な香味があり、消臭効果がある
    ので、肉料理に合う。
    シチューなどの煮込み料理やハム、ソ−セ−ジに利用される。
    甘い風味があるので、焼き菓子や紅茶、ワインなどの風味づけにも利用される。
  ・芳香性健胃薬、
  ・漢方処方に、”しゃっくり抑制薬”とみなされる処方などに配合される。
    女神散  (にょしんさん)
    丁香柿蔕湯(ちょこうしていとう)
  ・歯科用薬原料に
    精油中には高濃度のフェノールを含むため、強い消毒作用があり歯科の消毒や歯痛の治療
    に用いられる。
  ・石けん、歯磨き、グリース、香水、防虫剤、タバコの香料などの原料として。染色にも。

チョウジ油(英名: Clove oil)
植物を蒸留して、その香気成分を取り出す技術がいつ頃始まったか、はっきりとは判っていないが相当古くから知られていたようだ。
チョウジ油はチョウジの花蕾、葉を水蒸気蒸留して得る。水より重い油として、薬用には16世紀末頃から用いられた。日本に蒸留技術が伝えられたのは17世紀中頃、チョウジ油の製造は1672年、長崎奉行がオランダ通司に学ばせたのが始まりとされている。当時の堺の商人がこの技術をいち早く導入し販売しだした。「切り傷、痔、やけど、ひび、あかぎれ、婦人の顔に塗る、熱病、風邪など」万能薬的な売り方がされていた。

参考文献
  ・朝日百科 世界の植物 (朝日新聞社)
  ・第15改正 日本薬局方解説書 (広川書店)
  ・最新生薬学 刈米達夫著  (広川書店)
  ・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著 (広川書店)
  ・生薬単 原島広至著    (株式会社エヌ・ティ・エス)
  ・植物分類表 大場秀章 編著 (アボック社)
   






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