カカオノキCacao

カカオノキ Theobroma cacao Linne
 真正双子葉類Eudicots >中核真正双子葉類Core Eudicots >バラ類Rosids>アオイ群Malvids
    アオイ目Malvales
      アオイ科 Malvaceae アオギリ科Sterculiaceae) カカオ属 Theobroma
カカオノキCacao Tree

ココアやチョコレートの原料

生薬名  :カカオ脂
利用部位 :成熟果実の種子
利用   :医薬品原料(坐剤の基剤)、化粧品、食用
名前の由来:植物分類学者リンネはアステカの人たちの”神への奉げ物”に因み、
       "teos" 神の ””broma食べ物”Theobromaと名づけた。 Cacaoはメキシコ語。

メキシコ原産の常緑小高木。中央及び熱帯アメリカでの栽培は2000年以上に及ぶと考えられている。
カカオを栽培食物としたのは、古代マヤ族やアステカ族で、彼らにとってカカオは大変貴重な食べ物で、神聖な神への奉げものとして、また貨幣としても利用されていたほど。ヨーロッパへはいつ頃なのか、大体16世紀初め、コロンブスによってカカオ豆がスペインにもたらされた。

カカオ豆の採れるカカオはアオイ科の高木で葉は長楕円形で互生。花は小さく直径1.5cm程度、5弁で白く萼は紅紫色。香りはなく、幹や太い枝に直接つく。花の後、枝だけでなく幹にも実のなるちょっと風変わりな樹。このように幹や太い枝に直接つく花(果実)を幹生花(幹生果)といいい熱帯の植物に多く見られる。イチジク(クワ科)の仲間も典型的な幹生花(幹生果)の1つ。

花のあとにラクビーボールのような実がなるが結実する確立は少なく、200~400個の花のうち1個の果実ができる程度。6ヵ月後に完熟する。果実は5室に別れ、各室に1列にならんで10数個づつ、合計40~60個の種子(カカオ豆)が入っている。
胚乳はないが子葉が肥厚し、脂肪油50%、テオブロミンが約2%、カフェインが0.8%程含まれている
種子を取り出し数日間バナナの葉で包み積み重ねて発酵させると、赤褐色に変色し苦味が消えて芳香を発散するカカオ豆になる。

カカオ豆を炒って、チョコレート色になったところでロールにかけ砕き種皮を取り去りすりつぶすと、カカオ・ペーストになる。これに香料や砂糖、ミルクを加えるとチョコレートになる。カカオ・ペーストを圧搾して得られる脂肪分がカカオバター「カカオ脂」。カカオ脂の融点は31~35℃でちょうど人の体温でとけ、変質しにくいことから坐薬の基剤や化粧品の原料にされる。

カカオ脂をとった残りを粉末にしたものがココアの原料となる。テオブロミン、カフェインを含んでいるので興奮作用があり、中枢神経を活性化させ強心作用、末梢血管を拡張させて血圧を下げる効果もある。また腎血管の拡張、尿細管の再吸収抑制などで利尿効果を示すなど心臓や腎臓にも作用するといわれている。ココアやチョコレートにはポリフェノールが含まれているのも話題になっている。


主な成分と働き

カフェイン、 テオブロミン 脂肪油(45~58%)
 ・カフェイン
   チャ(Thea sinensis)、コーヒー(Coffea arabica)豆、カカオ(Theobroma cacao)などに
   含まれるプリン誘導体。
   中枢神経興奮、利尿、心筋興奮、気管支節及び冠状血管の弛緩作用などを示す。
   中枢への作用部位は大脳皮質。
 ・テオブロミン
   カカオ豆などに含まれるプリン誘導体。強心作用、腎血管の拡張、尿細管の再吸収抑制など
   で利尿効果を示す。
   利尿効果はテオフィリンより弱いが持続性があるので利尿薬として用いられる。
   また抹消血管拡張により血圧を下げる効果もあり、降圧薬としても用いる。中枢興奮作用も
   あるが、カフェインより弱い。

利用法
  化粧品(皮膚をやわらかく保護)、医薬品坐剤の基剤 食用 飲用
 
カカオの実(カカオポッド) 
1果実に30~35個の種子が入っている。
カカオの種子は、白く甘酸っぱいパルプという果肉に包まれている。バナナの皮に包み発酵させると表面を包むバルプが解けてチョコレートの原料になるニブスとかわのハクスができる。

     カカオ豆
         Photo:花博記念公園 咲くやこの花館温室

参考文献
  ・朝日百科 世界の植物 (朝日新聞社)
  ・第15改正 日本薬局方条文と注釈 (広川書店)
  ・最新生薬学 刈米達夫著  (広川書店)
  ・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著 (広川書店)
  ・植物分類表 大場秀章 編著 (アボック社)

(コメント)
これ迄、植物を系統的に分類する方法ではシダ植物と種子植物、裸子植物と被子植物、単子葉植物と双子葉植物というような方法が親しまれてきたが、近年、DNA配列に基づく系統関係から、従来とは異なる配列がとられるようになった。
APGによる大分類で、1998年に最初の系統的分類APGⅠが発表されてから改定が加えられ、現在は2009年のAPGⅢが発表されるに至っている。
その結果カカオノキが属していたアオギリ科はアオイ科に統合された。

所属「科」などは近年の遺伝子DNA配列に基づく、新分類体系APGⅢ方式に従った分類、配列順にしています。各、同じ科内での並び順は、学名の属名アルファベット順になっています(T.K)