ワタ(綿)
インドワタ Gossypium arboretum Linne var indicum Roberty
真正双子葉類Eudicots >中核真正双子葉類Core Eudicots >バラ類Rosids>アオイ群Malvids
アオイ目Malvales
アオイ科 Malvaceae ワタ属 Gossypium
木綿(cotton)の原料繊維、綿実油原料
利用部位 :①種子の周りについている繊維 ②製綿後の種子
利用 :①コットン、脱脂綿、綿花、繊維 ②綿実油原料
名前の由来:昔は「腸」を”わた”と読み、衣類の中に綿毛を詰めることから、体の腸に見立てて
「わた」という名になった
ワタ(綿)とはアオイ科ワタ属の総称で、世界で15~20種ぐらいあり、そのうちの数種が栽培されている。多くは1年草だが低木のものもある。
世界各地の熱帯または亜熱帯地域が原産。日本に渡来した記録は8世紀、三河の国に漂着した天竺人(インド人)が、ワタの種をもたらしたが、栽培に失敗し長く途絶えていた。その後16世紀、永正年間に再渡来し三河の国で栽培が行われ、その後近畿圏にまで栽培が広がっていった。それまでの日本人の衣生活は特権階級では絹織物を着ていたが、庶民はアサ、カラムシ、クズなどの草皮繊維やカジノキ、フジ、コウゾなどの樹皮繊維を用いていた。ワタから得られる木綿繊維は保温性に優れ肌触りも柔らかく、伸縮自由、染色も好みの色に染められるなど、衣生活に画期的な恩恵をもたらした。
ワタ属は一般に高さ60cmから1mぐらいになり、長い葉柄のある葉を互生する。掌状に3~5裂の長い葉柄のある掌状葉を互生する。花は黄色、白色、紅色とあり、中央部が暗紅色になる。
日本で栽培されるワタ(綿)は黄色い花が多い。夏~秋にかけて直径5~6cmの花を咲かせる。夕方にはしぼんでしまう1日花。果実は成熟すると3つに割れ、それぞれの室に5個ないし7個の種子が入っている。種子の表面には短い地毛と長い綿毛が生えている。
種子の毛がワタ(綿)Cottonで、殆ど純粋なセルローズからなる。精製脱脂綿原料や木綿繊維の原料になる。
種子もまた重要な副産物で35~40%の含油量がある。脂肪油、ゴシポールを含み綿実油原料となる。粗製油は黄褐色~赤褐色で微苦味があり有毒なゴシポールを含有するためそのままでは食用にはならない。化学処理を行い精製油にする、精製精油は淡黄色、無味で食用になる
綿実油はリノール酸40~50%、オレイン酸20~70%、パルミチン酸20%、ビタミンE、ビタミンKを含む。半乾性油で、良品質の食用油として用いられる。その他サラダ油、オリーブ油の代用として、またマーガリン原料、石鹸などの原料にされる。
油を搾った綿実粕(かす)は、肥料として利用される。
ワタ属の系統
◇旧大陸系(2倍体)
・インドワタGossypium arboretum Linne
インダス川デルタ地が原産。日本、中国、朝鮮で栽培された。
・アジアワタG. herbaceum Oliver
中央アジア原産 西アジア地方で栽培。カーペットや毛布に織られる
・ナンキンワタ(南京綿)G. nunking Meyen
インド、中国、タイ、日本で作られる。繊維が褐色のため,茶綿ともいう。
◇新大陸系(4倍体)
・アブランドワタ(陸地綿) Gossypium hirsutum Linne
メキシコやグアテマラ原産、アメリカ南部、インド、アフリカで広く栽培。今日最も
重要な栽培種。綿毛は比較的繊細。
・シーアイランドワタ(海島綿) G barbadense Linne
熱帯アメリカ、ペルーが原産西インド諸島とアメリカ南部の海岸で栽培。
ワタの中で最も長い綿毛を作る。エジブトワタはこの種から育成された。
参考文献
・朝日百科 世界の植物 (朝日新聞社)
・第15改正 日本薬局方 (広川書店)
・最新生薬学 刈米達夫著 (広川書店)
・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著 (広川書店)
・花と樹の事典 木村陽一郎 監修 (柏書房)
・新食品成分表 2017年(東京法令出版株式会社)
・植物分類表 大場秀章 編著 (アボック社)
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