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ナツメ（棗）

商品写真
上･中：武田薬品京都薬用植物園　花と実りかけた果実
下：　咲くやこの花館　果実と熟した果実

ナツメ（棗） Zizyphus　jujube　Miller var. inermis Rehder　
　　　真正双子葉類Eudicots ＞中核真正双子葉類Core Eudicots ＞マメ群Fabids
　　　　　バラ目Rosales
　　　　　　　　クロウメモドキ科 Rhamnaceae　ナツメ属 Ziziphus

生薬名　　：タイソウ（大棗）
利用部分　：果実（秋に紅熟した果実を軽く湯とおし後、乾燥）
利用　　　：日本薬局方生薬　漢方処方配合生薬、お菓子、薬膳料理
名前の由来：新芽の出るのが遅く初夏近くになってから芽吹くことから夏芽と呼ばれたとも。
　　　　　　茶道で使用する抹茶の入れ物、棗はナツメの果実の形によく似ていることからの名。
　　　　　　タイソウは同属のサネブトナツメよりも果実が大きいから「大きな棗＝大棗」。

南ヨーロッパから中国南部にかけてが原産といわれる高さ１０ｍにもなる落葉高木。比較的乾燥したところを好む。ヨーロッパから中国にいたる道筋に自生していたものを長い時間をかけて改良が重ねられ、中国では実を食用、薬用にするため古くから栽培してきた。日本へは古く奈良朝時代には渡来していた。
葉は先のとがった卵状で光沢があり互生する。
花期は初夏５〜６月 、淡緑色で小さく目立たない小花が葉脇に群生して咲く。5枚の花弁に見えるのは、ガク片、花はがく片の間のサジ状の細いのが花弁。雄しべは5本。雌しべは１本。果実は初め緑色だが熟すると赤黒くなり次第に乾燥してしわができる。そのまま生でも食べられる。果肉は白くサクサクした歯ざわりで、水気のないリンゴのような感じで甘い。

暗紅色に熟した果実を採取し軽く湯とおし後、天日で乾燥した後、蒸して再度天日で乾燥する。干しナツメ（大棗）ができる。お菓子の材料にも薬膳料理にも利用される。果実はブドウ糖、果糖など糖類に富み、甘味がある。リンゴ酸、酒石酸も含くみ、漢方では利尿、強壮のほか緊張した筋肉を緩め、咳を止め、腫物を治すなど漢方処方には高頻度で使用される漢方の要薬である。
単味で用いられるよりも漢方処方に配剤すると、他の生薬の成分をうまく引き立て緩和し、体に吸収しやすくする作用がある。緩和、鎮静、鎮痛、強壮、補血などの目的で使用される。
　　　　　
　　　　　ナツメ実説明

成分・効能
　・高濃度のcyclic ＡＭＰ
　・トリテルペノイド化合物：オレアノール酸、ベツリン酸、ウルソール酸
　・サポニン：ジジプスサポニン�機銑掘．献絅献絅櫂轡稗�
　・糖類：ブドウ糖、果糖、ショ糖
　・多糖類粘液：アラビナン、ペクチン
　・有機酸：リンゴ酸、クエン酸、酒石酸
　・無機質：カリウム、カルシウム　　　など

漢方では、通経や利尿、関節炎や腰痛のために使われる。　体を温め、筋肉の緊張を緩和させる作用がある。
この生薬が含まれている漢方処方は数多くあり、風邪薬、鎮痛鎮痙薬、健胃消化薬、止瀉整腸薬、精神神経用薬とみなされる処方及びその他の処方に高頻度で配合される

一漢方処方例ー
　・加味温胆湯　（かみうんたんとう）
　・葛根湯　　　（かっこんとう）　
　・甘草大棗湯　（かんばくたいそうとう
　・桂枝湯　　　（けいしとう）　　
　・黄耆建中湯　（おうぎけんちゅうとう）
　・黄連湯　　　（おうれんとう）
　・藿香正気散　（かっこうしょうきさん）
　・甘草瀉心湯　（かんぞうしゃしんとう）
　・帰耆建中湯　（きぎけんちゅうとう）
　・加味帰脾湯　（かみきひとう）
　・帰脾湯　　　（きひとう）
　・桂枝加葛根湯（けいしかかっこんとう）
　・小柴胡湯　　（しょうさいことう）
　・大柴胡湯　　（だいさいことう）　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　その他多数の処方に配合

参考文献
　　・朝日百科　世界の植物（朝日新聞社）
　　・第１５改正　日本薬局方解説書（広川書店）
　　・最新生薬学　刈米達夫著（広川書店
　　・薬用植物学各論　木村康一・木島正夫共著　（広川書店）
　　・生薬単　原島広至著（株式会社エヌ・ティ・エス）
　　・花と樹の事典　木村陽一郎　監修（柏書房）
　　・山渓カラー名鑑　日本の樹木（山と渓谷社）
　　・原色和漢薬図鑑　難波恒雄著（保育社）
　　・植物分類表　大場秀章　編著　（アボック社）
　　・日本薬草全書　水野瑞夫、田中俊弘共著(新日本法規出版)

（コメント）
棗の字は朿（とげ、トゲのある木）を上下に重ねたもの。鋭い棘に刺されると痛みはすざましい。
本来ナツメも棘があったが収穫する時、棘があると、困るので改良を重ね棘の無い種類が生み出されたそうだ。ちなみに学名のinermis は“棘の無い”を表す。inermisのラテン語本来の意味は“武装していない、丸腰の”を表している。


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