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ウンシュウミカン(温州蜜柑)

商品写真
上:和歌山 有田
下:山之辺の道 ウンシュウミカンの花

ウンシュウミカン(温州蜜柑) Citrus unshiu Markovich 
  真正双子葉類Eudicots >中核真正双子葉類Core Eudicots >バラ類Rosids>アオイ群Malvids
   ムクロジ目Sapindales
     ミカン科 Rutaceae ミカン属 Citrus 

柑橘類の代表品種

生薬名  :チンピ (陳皮)
利用部分 :成熟果皮
利用   :日本薬局方生薬 漢方処方用薬
名前の由来:蜜のように甘いかんきつ(柑橘)から「密柑」になり「みつかん」から「みっかん」
      「みかん」になったと考えられている。中国の温州(淅江省)の地名とは関係ない。
       温州がミカンの中心地であったため、ウンシュウの名がついたと推定されるが原産地
      ではない。
      生薬名、陳皮の陳は「古い、老いた」の意味。古い皮の意味。


柑橘類の中で、果皮の剥きやすいグループをミカン類マンダリンmandarinと呼び、その中でも果皮が橙色〜赤いのをタンジェリンとして区別するが元々は同一種。ミカン類はインドのアッサム地方に原生する野生種が中国に伝わり、発展し日本へも伝わった。
現在、日本で生産高が最も高いウンシュウミカンは遣唐使時代、天台の僧が唐から帰国の際、持ち帰った早桔、慢桔、天台山桔の種子の中から、鹿児島県の長島で、たまたま偶然に生えた実生から出来た、日本原産の常緑低木と言われている。ウンシュウミカンと同じものは中国にはない。約200年前頃から全国的に栽培が広まった。

日本の全柑橘の85%を占め、ミカンの代表品種になっている。日本で普通ミカンというとこの品種を指す。
果実は多汁で甘く、軟らかい。果皮は薄く指でむきやすい。秋〜冬にかけて果樹が成熟した頃、採取し皮を剥ぎ取るか、または湯通しした後、果肉を取り除きその果皮を乾燥させる。よく乾いた橙黄色のものを折ると良い香りがする。

皮の採取時期により、異なる生薬の名前になる。果皮の新鮮なものをトウヒ(橘皮)、陳旧なものをチンピ(陳皮)、未熟果実をクマル(久丸)(枳実の代用)という。
一般には陳旧なもの、1年位たって橙黄色が濃くなった陳皮が用いられる。生薬の中には伝統的に古いほど効果が高いとされるものがあり「六陳」と称される。
チンピ (陳皮)はその中の1つでほかにキジツ(枳実)、ゴシュユ (呉茱萸)、ハンゲ(半夏)、マオウ(麻黄)、ロウドク(狼毒))が挙げられている。ロウドク(狼毒)とは何をさしたのは、現在では明確ではない。クワズイモの根茎、マルミノウルシの根、ジンチョウゲ科の瑞香狼毒の根のいずれかと考えられているが定かではない。
これらの生薬は寝かされることで成分中の強い成分が揮発したり、酸化により作用が弱まると考えられている。また逆に薬効成分が凝縮されたりもする。無論生薬によってはあまり古すぎるのも良くない。適切な時期に使用するのが好ましいものもある。六陳に対比して新しいものほど良いとされる八新がある。
精油(リモネン)配糖体(ヘスペリジン)クエン酸などを含み漢方では芳香性健胃薬にする。又果皮を圧搾してオレンジ油を取る。水蒸気蒸留油をミカン油と称しオレンジ油と同様に扱う。

成分(ダイダイの橙皮に同じ)
  ・精油:リモネン、リナロール、テルピネオールなど
  ・フラボノイド配糖体:ヘスペリジン、ナリンギン、ノビレチン
  ・アルカロイド:シネフィリン
  ・その他:クエン酸、ビタミンC、ペクチン
用途
  ・オレンジ油採取用に
  ・主として漢方処方用薬として使用される。
   健胃消化薬、鎮咳去痰薬とその他に高頻度で配合される。また粉末は芳香性健胃薬として
   胃腸薬に使われる。

 漢方処方例
  ・胃苓湯  (いれいとう) 
  ・温胆湯  (うんたんとう)   
  ・加味温胆湯(かみうんたんとう)
  ・茯苓飲  (ぶくりょういん)  
  ・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
  ・六君子湯 (りっくんしとう)
  ・平胃散  (へいいさん)
  ・香砂平胃散(こうさへいいさん)
  ・清肺湯  (せいはいとう)
  ・二陳湯  (にちんとう)     など多くの処方に配合

参考文献
  ・朝日百科 世界の植物 (朝日新聞社)
  ・第15改正 日本薬局方解説書 (広川書店)
  ・最新生薬学 刈米達夫著  (広川書店)
  ・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著 (広川書店)
  ・生薬単 原島広至著    (株式会社エヌ・ティ・エス)
  ・花と樹の事典 木村陽一郎 監修  (柏書房)
  ・山渓カラー名鑑 日本の樹木 (山と渓谷社)
  ・原色和漢薬図鑑 難波恒雄著 (保育社)
  ・食材図典   (小学館)
  ・日本薬草全書 水野瑞夫、田中俊弘共著(新日本法規出版)
  ・植物分類表 大場秀章 編著 (アボック社)

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