ボタン（牡丹）

商品写真

上・中：鎌倉　鶴岡八幡宮牡丹園 の寒ボタン
下：西宮市立北山緑化植物園　　

ボタン（牡丹）　Paeonia　 saffruticosa 　Andrews
 真正双子葉植物Eudicots＞中核真正双子葉植物Core Eudicots
　　　ユキノシタ目Saxifragales
　　　　　ボタン科 Paeoniaceae (←キンポウゲ科 Ranunculaceae )　ボタン属Paeonia

花の王様　花王　

生薬名　　：ボタンピ（牡丹皮）　　
利用部位　：根皮
利用　　　：日本薬局方生薬　漢方処方用薬
名前の由来：色が丹(赤)になるのが上品とされ、牡丹は種子ができにくくオス「牡」の花とみなさ
　　　　　　れたので牡丹の名に。新苗は根から生える。

日本薬局方収載の生薬、また漢方薬処方になくてはならない原料生薬である事は芍薬と同じ。
芍薬が草本であるのに対し、牡丹は落葉低木。中国が原産で日本へは奈良時代、薬用として渡来したのもシャクヤク(芍薬）と同じ。
その豪華華麗な花は多くの人々に好まれ花の中の王「花王」とも「花神」「富貴草」など様々に称される。
牡丹の栽培は日当たりが良く、風通しの良い肥沃で排水の良い土が好まれ、４〜６年かけて初めて収穫される。
薬用には根を用いるため、薬にするためには根に栄養をやる必要があり、残念ながら開花時には花は取り除き根を肥大させる。
先ずひげ根を取り除き水洗いした後、４〜５日、日干しにしてから生の状態の時、芯の木部を抜き取り、根皮だけにしたものが日本薬局方　ボタンピ(牡丹皮）となる。外面が紫褐色で皮が厚く、切面や内部に成分ペオノールの白い結晶がついたりした香気の強いものが良品とされている。奈良県や長野県で栽培され、特に大和牡丹は良品とされていたが近年は減少してしまった。

ボタンピは華やかな花から連想されるように女性のための薬効を含んでいるため婦人薬に処方される。主に頭痛、腹痛、月経不順など婦人科疾患の停滞する血行障害に用いられる。神農本草経にも消炎、鎮痛、鎮静、浄血などを目的の駆瘀血剤として収録されている。

主要成分
　　・フェノール類：ペオノール(paeonol)、ペオノシド、ペオノリド
　　・モノテルペン配糖体：ペオニフロリン、オキシペオニフロリン、カンペステロール
　　・フラボノイド：ペオニン
　　・安息香酸　　などを含有する。

薬効と用途
　　足腰の冷え、月経困難、月経不順、更年期障害、血の道症など、血行障害に用いられる。
　代表的な漢方処方薬例
　　・大黄牡丹皮湯（だいおうぼたんぴとう）
　　・桂枝茯苓丸　（けいしぶくりょうがん）
　　・加味逍遥散　（かみしょうようさん）　　　　　
　　・八味地黄丸　（はちみじおうがん）　　
　　・六味丸 　　 （ろくみがん）
　　・牛車腎気丸　（ごしゃじんきがん）　　　　　　　など

カンボタン
Photo：鎌倉　鶴岡八幡宮牡丹園

ボタンの花期は５月初めだが、寒牡丹は冬季に花を咲かせ、寒中に華麗な花を愛でる。寒さよけにワラをかぶせるコモかぶりといった独特の仕立て方がある。
本photoも寒さよけにワラを被せて育てている、鎌倉鶴岡八幡宮牡丹園の寒ボタン。

参考文献
　　・朝日百科　世界の植物　（朝日新聞社）
　　・第１５改正　日本薬局方解説書　（広川書店）
　　・最新生薬学　刈米達夫著　（広川書店）
　　・薬用植物学各論　木村康一・木島正夫共著　（広川書店）
　　・生薬単　原島広至著　（株式会社エヌ・ティ・エス）
　　・薬になる花　田中孝治　(朝日新聞社)
　　・花と樹の事典　木村陽一郎　監修　　（柏書房）
　　・日本の薬草全書　中山草司　啓明書房
　　・植物分類表　　大場秀章　編著　（アボック社）

(コメント）
これ迄、植物を系統的に分類する方法ではシダ植物と種子植物、裸子植物と被子植物、単子葉植物と双子葉植物というような方法が親しまれてきたが、近年、ＤＮＡ配列に基づく系統関係から、従来とは異なる配列がとられるようになった。
ＡＰＧによる大分類で、１９９８年に最初の系統的分類ＡＰＧ�気�発表されてから改定が加えられ、現在は２００９年のＡＰＧ�靴�発表されるに至っている。
その結果、従来キンポウゲ科に属していたボタンやシャクヤクはボタン科としてキンポウゲ科から独立した。



科目別の一覧