セイヨウナツユキソウ（西洋夏雪草)

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Photo：武田薬品　京都薬用植物園

セイヨウナツユキソウ（西洋夏雪草）Filipendula ulmaria　Maxim
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　( 旧名　Spiraea ulmaria　 Maxim)　　　
真正双子葉植物Eudicots＞中核真正双子葉植物Core Eudicots＞バラ類Rosids＞マメ群Fabids
　　　バラ目Rosales
　　　　　　バラ科Rosaceae　シモツケソウ属Filipendula　
　
別名：メドウスイートMeadowsweet クイーン･オブ･ザ･メドゥ（草原の女王)
　
植物起源医薬品(Drugs of plant origin)　アスピリンの起原植物

利用部位 　：①花、②葉、③茎、④根
利用　　　：①、②アスピリンの起原植物　　
　　　　　　①ハーブティ、料理（ジャム、シロップ、ワインの風味付け）、
　　　　　　　②、③、④染色（
名前の由来　：白い小さな花の集まりが雪のように見える、夏に咲くことから。
　　　　　　湿った草原に群生する見事さから草原の女王クイーン・オブ・ザ・メドゥとも、
　　　　　　　甘い香りがすることからメドゥスイートとも言われる。

ヨーロッパ、アジア西部、モンゴルを原産地とし、湿った草原に群生する多年草。
群生する見事さから、草原の女王と呼ばれるにふさわしい、白い花はほのかに甘い香りがする。
花には風邪などの発熱や胃痛、腹痛、下痢症状など消化器のトラブルに効果があるとしてハーブティに利用されてきた。抗炎症作用があり、かつて胃炎、胃潰瘍のための胃薬として用いられた。

有史以来、人々は多くの痛みからの開放を願い、痛みを止める薬を切望してきた。ギリシャの医師ディオスコリデスは、白い葉をつけるヤナギの薬効を著書「薬物学」の中で述べている。今日のアスピリンにつながるセイヨウシロヤナギ(英名white willow)サリックス・アルバ（Salix alba）だ。数多くのヤナギの品種中からディオスコリデスがどうしてサリックス・アルバ（Salix alba）を選択しえたのだろうか。偉大な医師、賢者たるゆえんだろう。

以来、リウマチ、神経痛、歯痛、耳痛あるいは分娩痛などの多くの痛みからの解放を願ってきたヨーロッパの人々は何世紀もの間、セイヨウシロヤナギほか数種のヤナギの葉や樹皮の煎じ薬を用いていた。無論その中の何が有効なのかは不明のままであったが、ついに、有効成分の分離に成功し、ローマ時代以来の２５０種にのぼる異なったヤナギを総括するサリックス属に因みサリシンと名づけられた。

多くの科学者たちはヤナギに見られる鎮痛効果を持つ薬物を探し、多数の植物をテストした。その中の１つに牧草地の女王と呼ばれたセイヨウナツユキソウがあった。
１９世紀の初め１８２７年、ヤナギとは全く別の植物バラ科のセイヨウナツユキソウの葉や花から一種の鎮痛作用を持つ物質サリチルアルデヒドが抽出された、その当時のシモツケ属の属名スプラエアSpiraeaに基づきスピール酸と名付けられた。
後、これがサリチル酸と同じであることが判明。アスピリンの元になった物質。

アスピリンの名はアセチルサルチル酸、サリチル酸はドイツ語名でスピールゾレンという。今日ではセイヨウナツユキソウはフィリペンヂュラ･ウルマリアFilipendula ulmaria　Maximの名になっているが、かっての名、スピラエア・ウルマリアSpiraea ulmaria　Maximに因んでいる。

同属　類似植物
・シモツケソウ(下野草)Filipendula　multijuga　 Maxin

　
Photo：白馬五竜

木本のシモツケ（下野）と花がそつくり。シモツケが“木”で、本種は”草“なのでシモツケソウになつたという。シモツケは江戸時代か、あるいはもつと早い時期に下野の国（現在の栃木県）で発見されて事に因む名前。日本の特産で、本州中部以西、四国、九州の草原、山地、に自生する。ピンクの花が群生する見事さから高原の女王と呼ばれる。葉は切れ込みの深いモミジ形。長い葉柄に小さな側小葉が３～５ペアー程付く。良く似た栽培品種キョウガノコ（京鹿の子）には葉の切れ込みが大きく側小葉がないので、区別できる。

・キョウカノコ（京鹿子）Filipendula　purpurea　Maxim

Photo:八方尾根
花序はシモツケソウより大きい。古くからある観賞用の栽培種。葉は掌状に深く５裂し葉の縁は鋸歯（ギザギザ）になっている。ピンクの花を京鹿子に見立てた名。
キョウカノコの白花の品種をナツユキソウ（夏雪草）という
。
　　　　　

　　　　　　Photo：八方尾根　ナツユキソウ

・オニシモツケ（鬼下野））Filipendula　komtschatica　　Maxim

Photo：白馬　栂池自然園
高さ１ｍを超える大きな草丈で、白い花の花序がシモツケソウより大きく短毛が生えているので鬼の名が付く。北はカムチャカ、カラフトから南は岡山までの温帯から亜寒帯の高地に自生する。

参考文献
　　・朝日百科　世界の植物　（朝日新聞社）
　　・ヤマケイポケットガイド　ハーブ　亀田竜吉（山と渓谷社）
　　・世界を変えた薬用植物　ノーマン・テイラー原著　難波恒雄・難波洋子訳注
　　・製薬会社　インタビューフォーム
　　・植物分類表　　大場秀章　編著　（アボック社）

(コメント）
世界で初めて人工合成された医薬品、古くて新しい薬、アスピリンの起源が、このような可憐で、一見弱弱しい花から単離されたとは、なかなか想像しがたい
初めはセイヨウシロヤナギの樹皮が基だが実際にサリシンが分離されたのはこのセイヨウナツユキソウの葉からだ。そういう意味から薬用植物園などではよくセイヨウシロヤナギとセイヨウナツユキソウは近くに植栽され、ともにアスピリンの起源植物と紹介されている。

セイヨウナツユキソウ（西洋夏雪草)

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