モモ（桃）

商品写真
上：大宇陀　又兵衛桜の近く
中：元善光寺近郷の桃畑　剪定作業中。
下：桃の実

モモ（桃）Amygdalus　persica　Batsch
　　 真正双子葉植物Eudicots＞中核真正双子葉植物Core Eudicots＞バラ類Rosids＞マメ群Fabids
　　　　バラ目Rosales
　　　　　　バラ科Rosaceae　モモ属Amygdalus(←サクラ属Prunus)

邪気をはらう神聖な果物

生薬名　　：トウニン（桃仁）
利用部位　：種子　葉　白花
利用　　　：日本薬局方生薬　漢方処方用薬　民間薬　
名前の由来：名称の語源については諸説あり、たくさんの実がなることから、「百（もも）」が
　　　　　　そのまま果実の名前となったという説。熟すと赤くなる「燃え実」がなまって
　　　　　　「モモ」となった説、多くの果物の中でもメジャーな存在から「真実（まみ）」
　　　　　　が転化したなど諸説ある。

桃の原産国は種小名にペルシカとあるようにペルシャ（イラン）と考えられていた。紀元前１世紀頃、ペルシャからギリシャ、ローマを経て、ヨーロッパにモモ栽培が広まったからだ。しかし２０世紀にはいり黄河上流域、高原地帯でモモの原生地が見つかり、現在はここから中国各地へまたペルシャ、トルキスタンなどへ、伝わったものであることが明らかとなった。現在は中国原産の落葉小高木とされている。日本でも、弥生時代の遺跡からも種子が見つかるなど、古代にすでに渡来していたと考えられる。
モモは古代中国においても、また、日本でも神聖で、邪気を払う特別な魔力のある果物として、あがめられ多くの神事に用いられてきた。古事記にも伊邪那岐命（いざなぎのみこと）が、亡くなった妻の伊邪那美命（いざなみのみこと）に会うために、黄泉国（よみのくに）へ行ったところ、約束を破って伊邪那美命の変わり果てた姿を見てしまい、そのために、黄泉国の軍勢に追われ、現世と黄泉国との境にある黄泉比良坂（よもつひらさか）で生えていたモモの実を投げて悪鬼を払う故事ある。

邪気を払う故事に因んでか、３月３日の「ひな祭り」を「桃の節句」とも言って女の子の成長を桃の花を供えて祝う。

モモの花には桃色と白色とがあり、薬用には白い花の蕾を乾燥したものが使われる。ハクトウカ（白桃花）といいケンフェロール、クマリンというフラボン配糖体を含み、利尿や便秘に効果があるといわれている。葉は主に民間療法として、あせもや湿疹ができたときに浴剤として風呂に入れると効果がある。
桃で薬用として一番使われるのはトウニン（桃仁）と呼ぶ種子。アミグダリンを含むが、漢方では鎮咳薬とされるほかアンズの種子キョウニン（杏仁）とは異なる使い方がされ、消炎性駆瘀血薬として生理不順、生理困難のほか細菌感染による化膿など多くの処方に繁用されている。
成分
　　・アミグダリン、プルナシン、
　　・酵素：エムルシン(β‐グルコシダーゼ）
　　・ステロール誘導体：βシトステロール、カンペステロール、シトロスタジエノール
　　・トリテルペノイド：２４−メチレンシクロアルタノール
主な効果
　　　抗菌、抗炎症性駆瘀血、浄血、鎮痛、活性酸素消去作用など
応用
　　　漢方処方用薬として婦人薬、瀉下薬とみなされる処方およびその他の処方に配合される。
　　　消炎性駆瘀血薬として下腹部の満痛、腹部の血液の停滞、月経不順に応用される。
　　漢方処方例　
　　・桂枝茯苓丸　（けいしぶくりょうがん）
　　・桃核承気湯　（とうがくじょうきとう）
　　・大黄牡丹皮湯（だいおうぼたんぴとう）
　　・疎経活血湯　（そけいかっけつとう）　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　などに
参考文献
　　・朝日百科　世界の植物　（朝日新聞社）
　　・第１５改正　日本薬局方解説書　（広川書店）
　　・最新生薬学　刈米達夫著　（広川書店）
　　・薬用植物学各論　木村康一・木島正夫共著　（広川書店）
　　・生薬単　原島広至著　（株式会社エヌ・ティ・エス）
　　・花と樹の事典　木村陽一郎　監修　（柏書房）
　　・山渓カラー名鑑　日本の樹木　（山と渓谷社）
　　・原色和漢薬図鑑　難波恒雄著　（保育社）
　　・万葉の花　松田修著　（保育社）
　　・植物分類表　大場秀章　編著　（アボック社）

(コメント)
従来モモは近縁のアーモンド同様、サクラ属Prunusに属していたが、ＡＰＧ�靴諒�類ではモモ属Amygdalusに変更になった。
尚、今までサクラ属の属名Prunusはサクラ属では使われなくなり、サクラ属はCerasusになり
Prunusはスモモ属を表すようになった。
旧称サクラ属Prurusより多くの植物が新属名になった。
　モモもモモ属Amygdalusとして独立した。その他、アンズ属Armeniaca　サクラ属Cerasus　
バクチノキ属Laurocerasus　ウワズミザクラ属Padusが新しい属になった。

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