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ダイオウ(大黄)

商品写真
上・中・中:立山弥陀ケ原 ダイオウの花と葉。
背景は立山
下:武田薬品京都薬用植物園 

ダイオウ(大黄)
シンシュウダイオウ(信州大黄)Rheum sp.
  
  真正双子葉植物Eudicots>中核真正双子葉植物Core Eudicots
   ナデシコ目Caryophyllales
     タデ科 Polygonaceae  カラダイオウ属Rheum

生薬名  :ダイオウ(大黄)
薬用部位 :根茎
用途   :日本薬局方生薬 緩下薬原料、漢方処方生薬
名前の由来:全体が大きく根茎も時に子供の頭部ほどになり、中が鮮黄色を呈していることから。

中国北西部からチベット、青海、甘粛省などが原産地の多年生草本植物。
ダイオウは、草丈は花茎を含めると2mにもなる多年生の壮大な草本。
平地での生育は難しく四川省や雲南省の標高2000〜3000mの高原地帯に自生している。
本Photoも立山、弥陀ケ原 天狗平で富山県が栽培しているダイオウ(シンシュウダイオウ)を写したもの。
葉は長い柄を持ち、葉身は心臓形をして大きく、径は50cm以上、掌状に深裂する。花は大型の円錐花序で多数の淡紅色の小花を初夏から夏にかけて咲かせる。
球状の根茎は大きく、内部は鮮やかな黄色をしている。これを乾燥させたものが漢方の要薬ダイオウ(大黄)。他にはない卓抜した激しく強い薬効からダイオウのことを別名、「将軍」ともいう。

高血圧症用薬などの漢方処方に配剤されている他、便秘改善薬としても用いられる。エジプトでも紀元前からダイオウの類が知られていた。またヨーロッパにも中国産ダイオウはトルキスタンから陸路で、或いはインドから海路で伝えられ、古くから瀉下薬として欠かせない物になっていた。
日本でも正倉院御物にも収録されていることから、すでに奈良時代には中国から渡来していたと推察されている。洋の東西を問わず重要で伝統ある生薬として世界各地で瀉下薬・健胃薬として使用されている。

ダイオウの基原は日本薬局方ではタデ科レウム・パルマツム(Rheum palmatum)掌葉大黄、レウム・タングチクム(R. tangusticum)唐古特大黄、レウム・オフィキナレ(R. officinale)葯用大黄、レウム・コレアヌム(R. coreanum)朝鮮大黄またはそれらの種間雑種とされている。
中国産のダイオウは種類が多く、品質も必ずしも一定ではないなどが問題点であったが、R. palmatumとR. coreanumの種間雑種、 Rheum sp シンシュウダイオウ(信州大黄)が我国で創出され、生薬市場で錦紋大黄と称される良品に匹敵、あるいはそれ以上の品質であることがわかり、北海道などで栽培、供給されるようになった。葉は深裂掌状葉、淡紅色の花が特色の国産大黄。

エモジン、アロエエモジンなどのアントラキノンやアンスロンニ量体のセンノシドが含まれる。
そのうち、センノシドが薬効成分といわれるが、実際にはそれが腸内にいる腸内細菌により代謝されレインアントロンとなったものが薬効の本体となる。
ダイオウを含む処方群を「大黄剤」といい漢方では、下剤、駆瘀血剤として用いてきた。


ダイオウの近縁種にシベリア南部が原産の「ルバーブ R. rhabarbarum、和名「ショクヨウダイオウ」は野菜として栽培食用にされる。根元から直接伸びる太く肉厚な葉柄を利用する。
皮をむいて刻み弱火で煮てジャムをつくる。青リンゴに似た酸味が好まれる。葉はシュウ酸を大量に含むため食べられない

成分
  ・アントラキノン配糖体としてクリソファノール、アロエエモジン、エモジン、レイン、
   リンドレイン、
  ・ピアントロン配糖体としてセンノシドA〜F
  ・タンニン成分としてラタンニンなどが確認されている。

用途
  ・緩下剤として粉末を単用。またはセンナ末を配合する。
  ・便秘薬など配合剤の原料、および漢方処方用薬。緩下剤、高血圧、解熱鎮痛消炎、
   皮膚疾患用薬とみなされる処方、及びその他に配合されている。  
漢方処方例
  ・大黄甘草湯   (だいおうかんぞうとう)
  ・三黄瀉心湯   (さんおうしゃしんとう)
  ・大黄牡丹皮湯  (だいおうぼたんぴとう) 
  ・桃核承気湯   (とうがくじょうきとう)
  ・大柴胡湯    (だいさいことう)
  ・柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) 
  ・乙字湯     (おつじとう)
  ・潤腸湯     (じゅんちょうとう)
  ・麻子仁丸    (ましにんがん)
  ・調胃承気湯   (ちょういじょうきとう) 

参考文献
  ・朝日百科 世界の植物 (朝日新聞社)
  ・第15改正 日本薬局方解説書 (広川書店)
  ・第15改正 日本薬局方条文と注釈 (広川書店)
  ・最新生薬学 刈米達夫著  (広川書店)
  ・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著 (広川書店)
  ・生薬単 原島広至著    (株式会社エヌ・ティ・エス)
  ・原色和漢薬図鑑 難波恒雄 著 (保育社)
  ・植物分類表 大場秀章 編著 (アボック社)
  ・世界を変えた薬用植物 難波恒雄・難波洋子訳注(創元社)

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