イブキトラノオ（伊吹虎尾）

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上：美ケ原
中・下：伊吹山お花畑シモツケソウ、オタカラコウなどと混生。下：栂池

イブキトラノオ（伊吹虎尾）Bistorta officinalis Delarbre subsp. japonica (H.Hara) Yonek.
　　真正双子葉植物Eudicots＞中核真正双子葉植物Core Eudicots
　　　ナデシコ目Caryophyllales　　　　　
　　　　　　タデ科 Polygonaceae　イブキトラノオ属Bistorta（←タデ属Polygonum)

生薬名　　：ケンサン（拳参）
利用部位　：根（秋に採取）
利用　　　：民間薬　
名前の由来：花穂を虎の尾に見立てたのと、伊吹山で見つかったことからの名。

高地の日当たりの良いやや湿った草原や山地に見られる多年草。根茎は太く短い。上部の根は太いが下部の根は細く横向きになって曲がる。
茎は直立し高さ１ｍにもなる。茎に付く葉は細長く、葉柄も短い。葉は茎に互生し、上の葉は茎に直接付く。ギシギシに似ている。夏、茎の先に白～淡紅色の小さい花をびっしりつけた１個の総状花序を出す。花弁は無く花に見えるのは花弁状に５裂したがく。雄しべががく片より長く伸びる。花の後、痩果と呼ばれる種子が実る。
根をケンサン（拳参）と称しタンニンなどを含んでいる。収斂剤として、民間薬では下痢止めに用いる。尚同じ類似植物に小型のハルトラノオがある。利用方法に差は無い。

成分
　タンニン　ポリフェノール酸、フラボノイド類、その他デンプン、シュウ酸塩、エモジンなど
主な薬効と用途
　　　タンニンには収斂作用があり、下痢止めに
　　　うがい薬として口内炎、咽頭炎、扁桃炎、歯科疾患に抗菌作用がある。

トラノオの名の付く他の植物
オカトラノオ（岡虎の尾)Lysimachia clethroides　Duby　
　　真正双子葉類Eudicots ＞中核真正双子葉類Core Eudicots ＞キク亜綱Asteridae
　　　ツツジ目Ericales　　
　　　　　　サクラソウ科Primulaceae　オカトラノオ属Lysimachia

　　　　　

　　　　　　　　Photo：六甲高山植物園

名前の由来：長い総状の花をトラの尾に見立てて付いた名前。

春～初夏にかけて　北海道から九州までの山野の日当たりの良い、いたる処で見られる多年草。
日本の在来種。葉は互生する。トラノオの名が付くが薬用にはならない。

ヌマトラノオ（沼虎の尾）Lysimachia fortune　Maxim
真正双子葉類Eudicots ＞中核真正双子葉類Core Eudicots ＞キク亜綱Asteridae
　　　ツツジ目Ericales　　　
　　　　　サクラソウ科Primulaceae　オカトラノオ属　Lysimachia
　　　　　
　　　　　ヌマトラノオ

　　　　　　　　Photo：六甲高山植物園

名前の由来：沼地に自生し、花穂を虎の尾に見立てた名。
　　
本州、四国、九州など比較的暖かい湿地や沼に自生するサクラソウ科の多年草。同属のオカトラノオに比べ、花穂の幅が狭く長い。長い花穂はオカトラノオと異なり、傾き垂れ下がらず直立する。花は小さく６ｍｍほど。かつては多くの場所で見られたが、池や沼地の埋め立てなど、環境の変化により、数を減らしてきている。イブキトラノオのように薬用にはされない。

参考文献
　　・朝日百科　世界の植物　（朝日新聞社）
　　・最新生薬学　刈米達夫著　　（広川書店）
　　・薬用植物学各論　木村康一・木島正夫共著　（広川書店）
　　・山野草ハンドブック　伊沢一男監修　（主婦の友社）
　　・野草の名前　夏　高橋勝雄　（山と渓谷社）
　　・植物分類表　大場秀章　編著　（アボック社）
　　・花と樹の事典　木村二郎（柏書房）
　
（コメント）
従来、日本で長く親しまれてきた植物の分類体系は、近年遺伝子DNAに基づく新分類体系､APGⅢ分類が用いられるようなってきている。その結果、従来　タデ属とされていたイブキトラノオはイブキトラノオ属が創設され移動した。

イブキトラノオ（伊吹虎尾）

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