アイ（藍）

名前から探す	ア行	カ行	サ行	タ行	ナ行	ハ行	マ行	ヤ行	ラ行	ワ行
用途から探す	漢方薬	製薬基源植物	日本薬局方生薬	民間薬・薬用	ﾊｰﾌﾞ･ｻﾌﾟﾘﾒﾝﾄ	香料・香辛料	食用と嗜好品	染色・繊維	油脂	鑑賞用・その他

上・上：徳島藍住　赤のアイ畑
中：藍住　藍の館　白の花
下：花博記念公園咲くやこの花館　

アイ（藍）Persicaria 　tinctoria 　Gross
真正双子葉植物Eudicots＞中核真正双子葉植物Core Eudicots
　　ナデシコ目Caryophyllales
　　　　タデ科 Polygonaceaeイヌタデ属（サナエタデ属）Persicaria（←タデ属Polygonum ）　

　
　　　 別名：タデアイ（蓼藍）

　　　Japanese Blue　　藍染の原料　　

生薬名　　：①ランヨウ（藍葉）　②ランジツ（藍実）
利用部位　：①葉　②種子
利用　　　：①藍色染料　①②薬用
名前の由来：「青い」より転じた名　

「藍より出でて藍よりも青い」「出藍（しゅつらん）の誉れ」に譬えられる青色（紺色）の染料となる一年草。　
Japanese Blueと称される鮮やかな青色がこの植物から、とはとても想像できないありふれた植物。よく道端や畑のふちに自生している、イヌタデそっくりの外観をしている。イヌタデは今ではすっかり見かけなくなってしまったが、子供たちが、この米粒のような小花をむしりとって赤飯に見立てて「ままごと」遊びをしたことから、アカノマンマともといわれる植物。

香り高い藍色染料として親しまれているアイも元々は日本に野生する植物ではなく、中国から渡来したもので原産地はベトナム南部と言われている。古く奈良時代の大宝律令の賦役令にみられることから、７世紀以前にはすでに日本に入っていたと考えられている。葉の広いもの、細いもの、花の色も白、赤と多くの品種がある。
葉を藍染め原料として使うほか、葉をランヨウ（藍葉）、果実はランジツ（藍実）と称し虫刺され・解熱・殺菌に用いる。
藍染で染めた服を着ていると「虫よけ」になり紫外線からお肌を守る効果もある。

藍染は世界各地で古代より行われているが、それぞれ使われる染料植物は地域によって様々。日本の藍染はアイ（藍）タデ科のアイを発酵して使うが、リュウキュウ藍はキツネノマゴ科、インド藍（印度藍）はマメ科。ウォード（欧州で栽培されていた藍）はアブラナ科、共通点はどの植物も配糖体「インジカン」が含まれる点が共通。
カーボウイが好んだジーンズも元々インド藍を使って染めたもので、草むらを歩くカーボウイが蛇よけの効果を期待したもの。蛇がインジゴの香りを嫌うからと言われている。
天然の草本木皮を使い染色する場合、その煎じた汁で染めるが、すぐ染まるのを直接染料、媒染剤を使って初めて染まるのを媒染染料という。殆どの染色料はこの媒染染料だが、藍だけはいずれにも属さない唯一の建染（たてそめ）染料という独特の染料だ。
アイの葉の中には、「インジゴ」が元から含まれているわけではない。インドキシル配糖体「インジカン」として含んでいる。インドキシルがグルコースに結合した形。
そのためそのままでは染料にはできない。発酵、還元、酸化などの行程を経て「インジゴ」に変化させ、藍色に発色させる。葉を切り刻むことで、葉に含まれる酵素が働き加水分解されインドキシルに分解される。インドキシルは不安定なため、２量体のインジゴになる。

藍染の実際の行程では、７月下旬～８月下旬にかけて葉アイを収穫し、葉を細かく切り刻み乾燥させる。
乾燥葉を寝床と呼ばれる室に入れ、水を打って２～３カ月発酵させることで葉の繊維を砕き、葉のエキスの塊、蒅（すくも）を造る。インジゴがさらに早く溶けるように蒅を搗いて藍玉にする。

蒅や藍玉にはインジゴが含まれるが水に溶けないため、蒅や藍玉を仕入れた各地の染物屋は独自の方法でさらに発酵させ、染色の原料を作る。灰汁のアルカリ液などで還元し可溶性のロイコインジゴにする。このとき発酵により高温になるので土中に埋めた甕が使われる。発酵が進むと、水面にはコバルト色の泡（藍の華）がみられるようになり、染色ができる状態になる。こうした藍染の染液をつくることを「藍を建てる」という。水に溶けたロイコインジゴが繊維に染着した後、染めた布は空気中に出し十分に酸化させる。空気酸化されると、再び水に不溶なインジゴに変わる。何度も染めと酸化を繰り返し行うと、鮮やかな藍色が発色する。

アイの色素は殺菌力が強いので、古くから兵衣や野良着に重宝された。また「濃い藍色」、黒に近い濃色は「褐色（かちいろ）」と呼ばれ、「勝ち」に通じる色として、また堅牢で質実剛健というイメージとであいまって、武士の間で盛んに愛用された。
江戸時代、藍染めは急速に普及し、阿波（徳島）をはじめ、美濃、摂津、讃岐、伊予、筑後など各地で藍染めが行われた。特に阿波の藍は全国に流通していた。しかし現在は合成色素におされ天然の藍染めは徳島以外では殆んどみられなくなった。
　　
成分
　　インドキシル配糖体「インジカン」
利用
　藍染の染色に
　　　　抗菌・抗ウィルス作用があり虫刺され・解熱・殺菌に。消臭作用もある
　薬用　　　　　　　
　　　　藍実、藍葉：下熱、解毒

譬え
「青は藍よりいでて藍より青し」　
　　　　　青色の染料はアイの葉より作るが，元の葉の色より美しいの意味
「出藍（しゅつらん）の誉れ」も同じ意味　　
　　　　　教えを受けた生徒が先生よりも優れているときの例え
　　　　　福沢諭吉が「福翁百話」の中で「実に出藍の喩（たとえ）に漏れず」と紹介，

Photo：大和郡山　紺屋資料館にて　　アイ染めの様子を展示している。

　　　　
　　阿波産　蒅（すくも）は俵に詰められて各地へ送られた。

　　　　
　　　阿波産の蒅（すくも）と乾燥葉
　　　　　　　　　　　　　

　　　かつて藍染の染液をつくるのに使用していた甕の様子
　　　（発酵により、熱が出るため土中に甕を埋めて使用。）　　　　
　　
　参考文献
　　・朝日百科　世界の植物　（朝日新聞社）
　　・薬用植物学各論　木村康一・木島正夫共著　（広川書店）
　　・植物分類表　大場秀章　編著　（アボック社）
　　・花と樹の事典　木村二郎（柏書房）・食材事典　廣田孝子監修　（学研）
　　・ヤマケイポケットガイド　ハーブ　亀田龍吉　（山と渓谷）

（コメント）
此れまでの慣れ親しんできた分類ではタデ科Polygonaceaeのタデ属polygonumは、ＡＰＧⅢの分類ではソバカズラ属Fallopiaとイヌタデ属（サナエタデ属）Persicaria に分かれて分類された。

アイ（藍）

科目別の一覧