ケシ（芥子　罌粟）

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上・中･下：東京都薬用植物園　赤、白、薄紫の一重咲と、ピンクの八重咲

ケシ（芥子　罌粟）Papaver somniferum　Linne　
　　真正双子葉植物　Eudicots＞基部真正双子葉植物　Basal Eudicots
　　　キンポウゲ目Ranunculales
　　　ケシ科　Papaveraceae　ケシ属　Papaver

ソムニフェルム種　somniferum

医療用麻薬　あへん（阿片）の原料植物
　　　　　あへん法により栽培･所持等禁止

生薬名　　：①あへん(阿片）② オウゾクコク（罌粟穀）　③オウゾクシ（罌粟子）
利用部分　：①乾燥固化した乳液　②種子を除いたさく果　③種子
利用　　　：①モルヒネ、あへんなど医薬品原料　②鎮痛　鎮咳薬の製造原料　③食用（製菓用）
名前の以来：芥子をそのまま音読みにしたもの。

　
ケシの原産地ははっきりしないが地中海地方、ヨーロッパ東部、現在のトルコの地域が原産と言われている。現在インド、中国、トルコ、イランなどで栽培される。古代人の遺跡から発見されているぐらいなので、有史以前から栽培されていたことが推測される。
草丈１ｍ以上、４弁の華麗な花を咲かせる。
漢名では、ケシもヒナゲシもともにオウゾク（罌粟）という。ヒナゲシはヨーロッパ南部から西アジアに野生し、コムギについて種が運ばれ、コムギ畑の雑草的存在になっている。
ヒナゲシからは麻薬の“あへん”は取れないので、栽培は自由。多くの園芸種が作られ、ケシとともに古くから栽培されている。

華麗な花に魅せられヒナゲシと誤ってケシを栽培すると大変なことになる。
"あへん法、麻薬及び向精神薬取締法"で所持はむろん、栽培も厳しく規制されている。栽培は特別な許可が必要で、本Photoも東京都薬用植物園が栽培しているケシを撮ったもの。栽培場所は立ち入りが厳しく制限された２重のフェンスで、厳重に囲われた中で栽培されていた。ケシの調査研究、薬事監視員、医学･薬学･看護学生等への研修目的、正しい知識の普及のためを目的に、東京都が栽培を行っている。

ケシから“あへん”を採取し催眠などに用いる方法は紀元前３世紀には行われていたようで、アラビアの医師がヨーロッパにもたらしたといわれている。
華麗な大きな花弁が散ると大きくなった果実が目立つ。いわゆる“けし坊主”だ。花が散って１０日程の未熟果実の表面を傷つけると、乳液がにじみ出る。１０数分後には固まるので、これをかきとり乾燥させたものが“あへん”で、モルヒネ、コデイン、パパベリン、テバイン、ノスカピン、ナルセインなど２０数種のアルカロイドを含んでいる。

１８０３年ドイツ、ハノーバー・アインベックの、弱冠２０歳の薬剤師ゼルチュルネスは“あへん”から塩基性の結晶を取り出すのに成功した。ゼルチュルネスは、この物質に鎮痛、麻酔作用があることから、ギリシャ神話の眠りの神モルフュウスに因みモルフィウムと名づけた。
現在のモルヒネだ。

これは、天然物から有効成分を抽出するという、その後の近代薬学の最初の端緒となった記念すべき功績で、１７世紀初頭の最大の業績と言われている。

アヘン製剤やアヘン由来のアルカロイド製剤は鎮痛、鎮咳、鎮痙、麻酔、催眠など多方面にわたり今日の医療に貢献している。一方習慣性、中毒耽溺性を引き起こすので、取り扱いは厳しく法律によって規制されている。
不思議なことに、ケシの種子にはアヘンアルカロイドは含まれていず、約５０％の脂肪油、たんぱく質を含むことからおうぞくし（罌粟子）として製菓用などの食用に利用する。

ソムニフェルム種　somniferumの他、栽培があへん法で禁止されている例
アツミゲシ Papaver setigerum DC 　　

セティゲルム種setigerum

　

　

南欧の野生種、茎･葉に粗毛があるsetigerumは剛毛があるの意味。４～５月　紫色の華麗な花を咲かせる。草丈は５０～１００ｃｍ程、ソムニフィルム種somniferumに比べて小さいのが特徴。花の終わった後の果実、けし坊主も１周り小さい。ケシPapaver somniferum　Linne　同様　モルヒネが検出される。

参考文献
　　・朝日百科　世界の植物　（朝日新聞社）
　　・第15改正　日本薬局方解説書　（広川書店）
　　・最新生薬学　刈米達夫著（広川書店）
　　・薬用植物学各論　木村康一・木島正夫共著　（広川書店）
　　・世界を変えた薬用植物　難波恒雄・難波洋子訳注（創元社）

ケシ（芥子 罌粟）

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