ハナスゲ（花菅）

商品写真
上：京都薬科大学　薬用植物園　ハナスゲの花
中・下：武田薬品　京都薬用植物園　ハナスゲの花と葉

ハナスゲ（花菅）Anemarrhena asphodeloides Bunge
　　単子葉植物　Monocots
　　　　キジカクシ目Asparagales
　　　　　キジカクシ科(クサスギカズラ科ともいう）Asparagaceae（←ユリ科 Liliaceae）　
　　　　　ハナスゲ属Anemarrhen

生薬名　　：チモ（知母）
薬用部分　：根茎（秋に根を掘り出し地上茎と細根を取り除き乾燥させる。）　
利用法　　：日本薬局方生薬　漢方処方用薬　　　　　
名前の由来：葉がカヤツリグサ科のスゲ（菅）に似て、地味なスゲの花と比べ綺麗な花が咲くこと
　　　　　　から。
　　　　　　
生薬名　チモ（知母）の由来は、中国の本草学者、李時珍によると、薬用になる根のもじゃもじゃとした毛の多い形がチボウという虫の形に似ていることからチボウと呼ばれ、後なまってチモになったのだと記している。
また古くからの民話によると、身寄りのない薬草採りの老婆が自分を母のように親切に助けてくれた木こりの夫婦に「母の心を知る息子に巡り会えた」と言ってハナスゲの根が薬草であることを教えた。それで薬草の名がチモ「知母」になったという説もある。

中国北部の乾燥した丘陵地や砂丘に自生する多年草。日本へは享保年間に苗が渡来し栽培されているが生産高はなく、殆ど中国から輸入している。
長さ１５〜７０ｃｍの線形葉を多数叢生し、花茎は高さ５０〜１００ｃｍにもなり、長い穂状花序をつける。花は紫菫色の筒状花。昼間は閉じていて夜間に開くので、開花している状態を見る機会は少ない。根茎は太く塊状。横走し多数の細根を出す。秋に根を掘り、地上茎と細毛を取り除き陰干したものが「毛知母」。外皮を削りと天日に干したものを「知母肉」という。肥大して潤いがあり、ひげ根のないのが良品とされている。

チモ（知母）には滋潤（潤いを与える作用）解熱、鎮静の効があるのでアトピー性皮膚炎、皮膚掻痒症などの皮膚疾患、糖尿病、風邪による高熱、咳、気管支喘息、不眠、関節炎、関節リウマチ、腰痛などに応用されている。

主な成分と効果
　・サポニン：サルササポニゲン、マルコゲニン、
　・ステロイドサポニン：チモサポニン
　・多糖類：チモニン、アネマランＡ〜Ｄ、
　・配糖体：マンギフェリン
　・ビタミン類：パントテン酸、ニコチン酸　　など

用途
解熱､血糖降下作用、血小板凝集抑制作用など　　
単味で用いられる事は少なく､専ら解熱薬、解毒、消炎、利尿、鎮静とみなされる処方、その他の処方に配合される漢方処方用薬。

漢方処方例
　　・酸棗仁湯　　（さんそうにんとう）
　　・滋陰降火湯　（じいんこうかとう）
　　・滋陰至宝湯　（じいんしほうとう）
　　・消風散　　　（しょうふうさん）
　　・辛夷清肺湯　（しんいせいはいとう）
　　・白虎加人参湯 (びゃつこかにんじんとう）

参考文献
　　・朝日百科　世界の植物　（朝日新聞社）
　　・第15改正　日本薬局方解説書　（広川書店）
　　・最新生薬学　刈米達夫著　　（広川書店）
　　・薬用植物学各論　木村康一・木島正夫共著　（広川書店）
　　・生薬単　原島広至著　（株式会社エヌ・ティ・エス）
　　・漢方　生薬　木村孟淳　（不知火書房）

（コメント）
分子系統学による新たな植物分類方のＡＰＧ�景�類体系でキジカクシ科は従来のクロンキスト体系分類のユリ科から分割され新たに独立した科になった。
キジカクシとは面白い名だが、葉が生い茂るとキジが隠れるほどになるとことからの名。

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