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カラスビシャク(烏柄杓)

商品写真
上:東京薬科大学 薬用植物園
下:武田薬品 京都薬用植物園 3枚の小葉

カラスビシャク(烏柄杓) Pinellia ternata Breitenbach 
  単子葉植物 Monocots
   オモダカ目 Alismatales
     サトイモ科 Araceae ハンゲ属 Pinellia

 別名:ヘソクリ

生薬名  :ハンゲ(半夏)
利用部位 :球状の塊茎(球茎)
利用   :日本薬局方生薬 漢方処方用薬
名前の由来:烏が使う程の小さな柄杓の意味、仏炎苞の形に由来する。
      ハンゲは暦の夏至から11日目の7月12日頃の「半夏」の頃にカラスビシャクが生える
      からとも言われている。その他諸説あり。

東アジア各地に自生するサトイモ科の多年草。かつては本邦全土の田畑や原野に自生し雑草のように普通に見られる多年草であったが、近年は見かけなくなった。漢方薬に必須の薬草。戦前は畑の雑草扱いで、なかなか除去できず農家の頭痛の種だった。農家の主婦は畑の雑草を抜きながら、カラスビシャクの塊茎を集め、それを薬問屋に売ってヘソクリにした、ということから別にヘソクリとも言われる。3〜4月頃、地中の塊茎から3小葉の複葉が1〜3枚出る。小葉は楕円形、先は尖り、ほとんど全縁。初夏、葉よりも長い花茎が伸び、先端に肉穂花序をつける。肉穂花序の根元が雌花部で、苞に合着しその上に短い雄花部が付く。その先は長く伸びムチ状になっている。花序のすべてはサトイモ科特有の仏炎苞で包まれる。
緑色の仏炎苞でつつまれた花軸の先端は細く長く伸び出て、その形状が蛇が舌を出しているように見える事からヘビノシタというあまり好ましくない別名もある。サトイモ科は大体このような仏炎苞が特徴。

カラスビシャクは繁殖力が強く、種子よりもむしろ塊茎、ムカゴ、珠芽による栄養繁殖が主で、繁殖手段を多く有するため、畑の雑草として駆除が難しかったのもうなずける。

7〜9月頃、球茎を掘り上げ、ひげ根を除去し水洗いし、約3%の食塩水につけ、暫時放置し後、外皮のコルク層を取り除く。水洗いの際、汁が皮膚に付くとかゆくなり皮膚に炎症が起きるので要注意。(サトイモ科は殆ど同じで、サトイモ、コンニャクイモなども同じく「かぶれる」ので要注意)水洗い後、天日で乾燥した後、イオウでくん蒸し漂白して、白色に仕上げ生薬のハンゲ(半夏)ができ上がる。
ハンゲはあくが強く、えぐみも強く喉を刺激するため、ショウガやブクリョウと併用する。つわりの際の鎮吐剤としての用途は有名。


主な成分
 ・フェノール類:ホモゲンチジン酸(えぐ味成分、タケノコのえぐみ成分も)
         3,4-ジヒドロキベンツアルデヒド(えぐみ成分)
 ・アミノ酸類、
 ・コリン
 ・脂肪酸類、sitosteryl-p-glucoside 
 ・鎮吐作用の本体L−arabinose多糖類と主とするガラクトロン酸カルシウムを含む水溶性多糖が
  報告。
 ・シュウ酸カルシウム(口唇刺激)

応用 
  健胃消化薬、鎮吐剤、鎮咳去痰剤とみなされる漢方処方に数多くで配合される。
   ・半夏瀉心湯  (はんげしゃしんとう)   
   ・半夏厚朴湯  (はんげこうぼくとう)      
   ・半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)        
   ・二陳湯    (にちんとう)
   ・柴陥湯    (さいかんとう)
   ・甘草瀉心湯  (かんぞうしゃしんとう)
   ・小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりゅうとう)
   ・小柴胡湯   (しょうさいことう)     
   ・大柴胡湯   (だいさいことう)        
   ・柴苓湯    (さいれいとう)
   ・柴胡桂枝湯  (さいこけいしとう)   
   ・六君子湯   (りっくんしとう)  
   ・小青竜湯   (しょうせいりゅうとう)    など多数

ハンゲ(半夏)に似た名前の植物
  ハンゲショウ(半夏生)

ハンゲショウ
Photo:京都 洛北 曼殊院 弁天池の畔 
   ドクダミ科も半夏の時期に花が咲くのでハンゲショウ(半夏生)になったという説。

参考文献
  ・朝日百科 世界の植物 (朝日新聞社)
  ・第15改正 日本薬局方解説書 (広川書店)
  ・最新生薬学 刈米達夫著  (広川書店)
  ・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著 (広川書店)
  ・生薬単 原島広至著    (株式会社エヌ・ティ・エス)

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