カンゾウ(甘草)/ウラルカンゾウ

商品写真
上・中:大阪薬科大学 薬用植物園 花 
下:武田薬品 京都薬用植物園  繊毛で覆われた莢果。

カンゾウ (甘草)
ウラルカンゾウ Glycyrrhiza uralensis Fischer
真正双子葉植物Eudicots>中核真正双子葉植物Core Eudicots>バラ類Rosids>マメ群Fabids
  マメ目Fabales
     マメ科FabaceaeLeguminosae)カンゾウ属 Glycyrrhiza

日本薬局方 カンゾウ(甘草)は
 ・ウラルカンゾウ(ウラル甘草) Glycyrrhiza  uralensis  Fischer
 ・スペインカンゾウ(スペイン甘草)Glycyrrhiza glabra Linne
     の根及びストロンで、ときには周皮を除いたものと定めている。(皮去りカンゾウ)
 

グリチルリチン製造植物

生薬名  :カンゾウ(甘草)
利用部位 :根、ストロン   
利用   :日本薬局方生薬 漢方処方用薬、カンゾウ末、カンドウエキス製造原料、
      グリチルリチン酸製造原料、甘味料 
名前の由来:根が甘い草から

初夏、葉の脇から穂状花序につけ、先端が淡い紫色の花を咲かせるマメ科の多年草。花の後 ねじれた円柱状の莢果が実る。莢果は細かい繊毛で覆われている。
Glycyrrhiza uralensis Fischer(ウラルカンゾウ) やGlycyrrhiza glabra Linne(スペインカンゾウ)の根や走根をカンゾウ(甘草)といい、有史以来、洋の東西を問わず薬用に又甘味料として広く用いられてきた。
中国から中央アジア、南ヨーロッパの乾燥地帯に自生する。Glycyrrhiza glabra は中国華北に、Glycyrrhiza uralensisはシベリアから満州蒙古に自生する。日本には自生しないため輸入に頼っている。苦い、辛いものが多い生薬のなかでカンゾウやアマチャは極めて甘く、カンゾウの属名Glycyrrhizaはギリシャ語のGlykrys(甘い)rhiza(根)に由来したもの。
我が国には奈良時代、遣唐使によってもたらされ、上質な当時のカンゾウが他の漢薬類とともに今なお奈良正倉院に保存されている。
カンゾウは神農本草経、上品に収録され緩和、鎮痙、解毒、鎮咳、去痰剤として多くの数え切れない漢方処方に配合される重要な生薬の1つに挙げられる。
又、カンゾウは漢薬だけでなく欧米でも重要な医療用医薬品や甘味料となっている。


成分・効果
カンゾウの主成分はグリチルリチン(甘み成分)。2〜6%を含有する。グリチルリチンはショ糖の150倍の甘さがあり極少量でも甘味料して役立つ、例えば醤油、味噌、佃煮、菓子類、煙草等の甘味料としても使われる。

グリチルリチン(酸)及びその加水分解成分グリチルレチン酸は副腎皮質ホルモン様作用、エストロゲン様作用、鎮咳作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用、解毒作用、抗ウイルス作用など多くの薬理作用が報告されている。
また構造式が副腎皮質ホルモン アルドステロンに類似することから、抗炎症・抗アレルギー作用と共に穏やかな男性ホルモン作用がある。多量長期の摂取は偽アルドステロン症を引き起こす可能性があるので注意が必要とされる。
他にイソフラボン、リキルチン、イソリキルチン、フォルモネチン、ポリサッカロイド、ステロール、クマリン、アスパラギンなどが含まれている。
   
成分
  ・トリテルペン配糖体:グリチルリチン
  ・フラボノイド:イソフラボン、リクイリチン、イソリクイリチン、フォルモノネチン
  ・その他:ポリサッカロイド、ステロール、クマリン、アスパラギン
                               など
用途と利用法
  ・顕著な胃液分泌抑制作用、鎮痛、鎮痙作用により、消化性潰瘍治療薬、鎮咳薬、去痰薬、
   グリチルリチン製造原料に使用される。
  ・慢性肝疾患の肝機能改善薬として、また湿疹、蕁麻疹、皮膚掻痒症などの医薬品原料に。
  ・漢方では最も広く使われている生薬として、緩下、解毒、鎮痛などを目標に痙攣痛、腹痛、
   筋肉痛、咽頭通などに汎用。
   漢方処方の7割には配合されるほど、甘草配合漢方処方は多い。
  ・カンゾウ末、カンゾウエキスに加工製造。
  ・低カロリーの甘味料として、醤油、タバコ、各種加工食品に利用される。



←←← Photo:武田薬品 京都薬用植物園 ”ウラルカンゾウの根”
     秋、2〜3年生の根を掘り採り、ヒゲ根を除き根とストロンを日干し乾燥する。

参考文献
  ・朝日百科 世界の植物 (朝日新聞社)
  ・第15改正 日本薬局方解説書 (広川書店)
  ・最新生薬学 刈米達夫著  (広川書店)
  ・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著 (広川書店)
  ・生薬単 原島広至著    (株式会社エヌ・ティ・エス)
  ・日本薬草全書 水野瑞夫、田中俊弘共著(新日本法規出版)
  ・植物はなぜ薬をつくるのか 斉藤和季(文春新書)
  ・原色和漢薬図鑑 難波恒雄著 (保育社)
  ・製薬会社インタビューフォ−ム

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