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ブナ(橅)

商品写真
上:滋賀県高島町 平池 新緑のブナ林 
中・下:鳥取県 大山 紅葉のブナ林

ブナ(橅)Fagus crenata Blume  
真正双子葉植物Eudicots>中核真正双子葉植物Core Eudicots>バラ類Rosids>マメ群Fabids
  ブナ目 Fagales
     ブナ科 Fagaceae ブナ属 Fagus

木クレオソート原料

利用部位 :材 、枝
利用   :日本薬局方 モク(木)クレオソート原料
名前の由来:属名のファグスFagusはギリシャ語で食べるの意味。果実が食用にできるから。
      役に立たない木として、木へんに無でブナと読ませている。ブナの語源は不明。
      別名で、ソバの名があるのは、実が蕎麦の実に似てカドぼっているため。

温帯の広葉樹林の代表はブナで、世界的にはブナ属の分布は、北半球温帯3地域(東アジア、アメリカ東部、ヨーロッパ暖・温帯)に10種ほど分布する。
その中で日本に生育しているのはブナ(Fagus crenata Blume)とイヌブナ(Fagus japonica Maxim) の2種類。ブナ林として私たちに馴染みのあるのはブナの方。200〜500年の樹齢があり高さ30mをこす巨木となり実に堂々とした風格を漂わす。一名シロブナの名があるように樹皮が滑らかで白い。ブナの幹のまだら模様は地衣類が好んで付着するため、多様な黒っぽい斑紋になっている。
イヌブナはブナに比べて材質が劣る、の意味からつけられた名で幹の色が暗褐色、クロブナの名がある。ブナより低地の温帯、太平洋側に育つ。

ブナ材は腐りやすく、加工後まがり、狂いが生ずることからブナを表すのに、木へんに無と書かれるなど役に立たない木とみなされスギ、ヒノキの植林に取って代えられ、伐採が盛んに行われた。ブナは役に立たない木どころか、その豊かな保水力から洪水を防ぐ緑のダムとして、又、土砂崩れを防ぐ緑の堤防として私たちの生活を支えてくれている。降った雨は葉で受けられ、自身の幹を伝わせて根に集められる。雨水が流れるルートが黒い筋となって幹に見られる。ブナ林が緑のダムといわれる所以だ。保護策が講じられるべきだ。

ブナの種子は脂肪分やタンパク質に富み、ナラ類やトチノキに含まれるタンニンやサポニンなどを含まないので、森で暮らす動物たちの貴重な食料源になっている。

ブナの材を乾溜させると水蒸気とともに油分(木タール)が溜出する。淡黄色透明で燻製のような臭いのある油状の液体でグアヤコール、木クレオソートの製造原料となる。あまり樹齢を重ねたものより、樹齢20〜30年の若木が収率がよいそうだ。木クレオソートは止瀉薬、正露丸の主成分として配合される。

−モク(木)クレオソートー
木クレオソートはブナ属(Fagus)諸種植物(Fagaceae ブナ科)以外にも、マツ属(Pinus)諸種植物(Pinaceae マツ科)、スギ属(Cryptomeria) 諸種植物(Taxodiaceae スギ科)、Afzelia属植物(タシロマメ属 Intsia 植物)(Leguminosae マメ科)、Shorea属植物(Dipterocarpaceae フタバガキ科) 又は Tectona属植物 (Vervenaceae クマツズラ科) の幹及び枝を乾留して得た木タールを原料としている、

これを蒸留して 180〜 230℃の留分を集め、更に精製・再蒸留すると淡黄色透明の液体が得られる。
化学的に合成されてえられるクレオソートと区別するため日本薬局方では木(もく)クレオソートと記載している。


  ブナの種子
   ブナ実

参考文献
  ・朝日百科 世界の植物 (朝日新聞社)
  ・第17改正 日本薬局方 (広川書店)
  ・最新生薬学 刈米達夫著  (広川書店)
  ・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著 (広川書店)
  ・日本の樹木(山と渓谷社)

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