クヌギ（櫟、橡）

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Photo：東大阪市　司馬遼太郎記念館

クヌギ（櫟、橡）Quercus acutissima　Carruthers
真正双子葉植物Eudicots＞中核真正双子葉植物Core Eudicots＞バラ類Rosids＞マメ群Fabids
　　ブナ目Fagales
　　　　　ブナ科Fagaceae　コナラ属 Quercus

古名：つるばみ（橡）・・・クヌギの実ドングリ

タンニン原料

生薬名　　：ドコッピ（土骨皮）ボクソク（樸樕）
利用部分　：①樹皮　②ドングリ　③葉　④材
利用　　　：①薬用　②飼料　染料　③サクサンの飼料　④薪炭材、シイタケ栽培のほだ木
名前の由来：国木（くにき）または食之木（くのき）からという説がある

本州の岩手、山形以南、四国、九州、屋久島、種子島の山地、丘陵地に普通に見られる落葉高木。中国、ネパール、朝鮮半島にまで分布する。近年、開発で里山の雑木林は失われているが、クヌギはコナラ、ミズナラ同様、こうした里山の雑木林の代表的な樹木に挙げられる。

古代から人との生活のかかわりが深い有用な樹木であった。古代人、縄文人たちの主な食料源は大量に実るドングリであった。クヌギの実はドングリの代表的存在。又森に住む動物たちにとっても、大切な糧となっている。粉にして水に晒して蓄えることも出来る。材は器具や船舶、車両に、薪炭用に又シイタケ栽培のほだ木にされる。幹が２ｍ位の所で伐採しても切り株から新しい芽が出て数年で回復する。再生持続可能な有用な資源といえる。

樹皮から染み出す樹液は昆虫たちの好物で、カブトムシやクワガタなどの虫たちが集まってくる。子供たちや昆虫愛好家にはたまらない存在だ。
樹皮はタンニンが大量に含み、収斂薬、染料やなめし皮用のタンニン原料にされる
コナラ、ミズナラ、アベマキなどのブナ科の樹皮もタンニンを含み収斂作用があることから、これらの樹皮の乾燥品は生薬名をボクソク（樸樕）と称し、漢方処方に用いられる。。

葉は絹糸を得るためサクサン（柞蚕）の飼料になる。サクサンのサク（柞）はクヌギやコナラ、ブナの総称。これらの葉を食べるヤママユガ科の昆虫の餌と為る。

分類学上蚕はチョウ目カイコガ科であり柞蚕はヤママユガ科に属する。ヤママユガ科はカイコガ科と同じく絹糸をとる目的で飼育される。ヤママユガ科は天蚕（テンサン）とも野蚕（ヤサン）とも呼ばれ、カイコガ科は家蚕と呼ばれる。カイコは完全に家畜化し自然界では生息困難なのに対し、ヤママユガ科は完全な家畜化は難しく、屋外の食樹（クヌギ、カシワ、コナラ、クリ、ブナなど）に網を張って飼育される。

漢方処方例
　・治打撲一方（ぢだぼくいっぽう）

―司馬遼太郎記念館―
東大阪市の住宅街の中にあり、生前の司馬遼太郎が執筆活動をしていた自宅と、６万冊にのぼる多くの蔵書のうちの２万冊を、イメージ展示する安藤忠雄設計の建物から構成されている。氏が生前好んだ雑木林風に造園されたお庭には、コナラ、クヌギを初めいろいろの雑木が、数多く自然の状態に植栽されている。お庭からは書斎を窓越しに見ることが出来、執筆活動を偲ぶことが出来る。

参考文献
　　・朝日百科　世界の植物　（朝日新聞社）
　　・薬用植物学各論　木村康一・木島正夫共著　（広川書店）
　　・万葉の植物　松田　修著　（保育社）
　　・日本の野生植物　木本1　（平凡社）
　　・樹の花　２（山と渓谷社）
　　・原色和漢薬図鑑　下　難波恒雄著(保育社)　

クヌギ（櫟、橡）

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