アマチャ（甘茶）

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上：京都薬科大学附属薬用植物園
下：京都府立植物園　アマチャの近縁種、アマギアマチャ

アマチャ（甘茶）Hydrangea macrophylla Seringe var thunbergii　Makino
真正双子葉類Eudicots ＞中核真正双子葉類Core Eudicots ＞キク亜綱Asteridae
　ミズキ目Cornales　　　
　　アジサイ科Hydrangeaceae (←ユキノシタ科Saxifragaceae)　アジサイ属Hydrangea

お釈迦様に注ぐ甘茶

生薬名　　：アマチャ（甘茶）
利用部分　：葉、茎枝（発酵させる）
利用　　　：日本薬局方生薬　甘味料
名前の由来：甘い茶から

わが国の山林に、ごく稀に自生する日本特産の落葉低木。主に甘味料用に栽培される。高さ１ｍほど、楕円形の葉が対生する。
ヤマアジサイの一系で、ヤマアジサイの甘味のある変種株が発見され、使用しはじめた。
釈迦誕生のとき、天から甘露水が降ったという伝説に因み、お釈迦様にはアマチャ(甘茶）を注ぐ。昔から４月８日の灌仏会に用いられていたが、江戸時代の大和本草等に記録されているように、利用の歴史は比較的新しい。

生葉には、苦味のあるグルコフィロズルシン（フィロズルシンの配糖体）が含まれていて、このままでは甘味はなく、苦いのみ。加工調整すると、発酵の過程で酵素にる加水分解がおこる。甘味成分フィロズルシン（ズルチンの一種）が生成され甘味が出てくる。

アマチャの花は最初淡水色、ついでうす赤く変色する。原料となる葉を採取するときは、花を咲かせないように、蕾のうちに摘花し葉の生育をよくする。

加工調製方法は９月ごろ葉を摘み、もみ、水洗した後、約２日間陽乾する。これに水を噴霧し、覆いをかぶせ１日放置し発酵させる。温度が約２５℃になると、むしろの上に広げ手でよく揉んで更に天日乾燥させる。酵素の作用により甘味が出てくる。そのため加熱乾燥よりも、ゆっくり自然乾燥させるのが良いとされている。

伊豆の山中には生葉のままでも甘いアマギアマチャ（天城甘茶）が自生しているが、甘味はアマチャより薄い。
甘味成分フィロズルシンphyllodulcinは、砂糖の約1000倍の甘味がある。甘味はきわめて強いにもかかわらず、人の体内では消化吸収されないので、糖尿病患者や肥満症患者の甘味料として砂糖の代わり用いられる。

注意すべきは同属のアジサイは有毒で、アジサイによる中毒例も報告されている。アマチャに有毒物質は含まれていないが、アマチャもアジサイの近縁種なので、やはり取り扱いは注意が必要。十分に発酵させることが必須条件。

厚生労働省ホームページ「自然毒のリスクプロファイル：高等植物：アマチャ」に濃いアマチャを飲んだことによる中毒例が報告されている。濃いアマチャは避け｢アマチャの飲み方｣として、薄く入れることが大切としている。

主な成分と効果
　　・イソクマリン関連物質：フィロズルシン、グルコフィロズルシ、ヒドランゲノール
　　・フラボノイド：ケンフェノール、ケエルセチン、イソクエルセチン、ルチン
　　・クマリン類：ウンベリフェロン
　　抗アレルギー作用、抗菌作用、抗酸化作用、歯周病予防などに有効

利用
　天然甘味料として　
　　　加工食品の甘味料、丸薬の味（甘味薬　口中清涼剤の製造原料）醤油の甘味

参考文献
　　・朝日百科　世界の植物　（朝日新聞社）
　　・第１５改正　日本薬局方解説書　（広川書店）
　　・最新生薬学　刈米達夫著　　（広川書店）
　　・薬用植物学各論　木村康一・木島正夫共著　（広川書店）
　　・生薬単　原島広至著　　　　（株式会社エヌ・ティ・エス）
　　・厚生労働省ホームページ　「自然毒のリスクプロファイル：高等植物：アマチャ
　　・日本薬草全書　(新日本法規出版)
　　・植物はなぜ薬をつくるのか　斉藤和季（文春新書）

(コメント）
これ迄、植物を系統的に分類する方法ではシダ植物と種子植物、裸子植物と被子植物、単子葉植物と双子葉植物というような方法が親しまれてきたが、近年、ＤＮＡ配列に基づく系統関係から、従来とは異なる配列がとられるようになった。
ＡＰＧによる大分類で、１９９８年に最初の系統的分類ＡＰＧⅠが発表されてから改定が加えられ、現在は２００９年のＡＰＧⅢが発表されるに至っている。
その結果、従来ユキノシタ科に属していたアジサイ属のアマチャ、アマギアマチャ、ノリウツギはアジサイ科としてユキノシタ科から独立した。

アマチャ（甘茶）

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