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イチイ(一位)

商品写真
上・下:日本新薬 山科植物資料館
下:イチイの近縁種 キャラボクの果実(イチイも似ている)

イチイ(一位)Taxaceae cuspidate Siebold et Zuccarine
  種子植物門 裸子植物亜門 Gymnospermae
    マツ亜綱 Pinidae  ヒノキ目 Cupressales   
     イチイ科 Taxaceae イチイ属 Taxus

別名:アララギ

  抗癌剤 パクリタキセル 基源植物イチイ科の一種

生薬名  :イチイヨウ(一位葉)
利用部分 :葉、樹皮、根
利用   :同属のセイヨウイチイは抗がん剤 タキソールの起源植物
名前の由来:昔、高官の持つ笏を、岐阜県高山の位山に自生する材で作ったことに因むという説。

イチイは北海道から九州の亜高山帯や寒冷地に自生し、シラビソ、コメツガ、エゾマツなどの針葉樹と混生する針葉常緑樹の高木。一見するとモミの木に似ていて、アララギの名で親しまれている。
岐阜県高山の近くにある位山(くらいやま)の原生林は特に有名。雌雄異株。花の時期は3〜5月、雄花は淡黄色で、9〜10個の雄しべが球状に集まる。雌花は葉裏に出て、卵型の小さい鱗片に包まれる。
秋10月に実がなる。針葉樹だが松ぼっくり状の球果にならない。実は赤くなり、常緑の葉と愛らしい赤い実のコントラストが美しい。丈夫な木であることから、庭木や生け垣にも植栽される。
赤い仮果皮に包まれて見えている中の部分が種子。秋には黒く熟す。
実の果肉は食べられるが、中の種は有毒なアルカロイト、タキシンを含むので食べていけない。(誤って食べると中毒を起こすので要注意)葉を一位葉といい、アルカロイド、タキシンやフラボノイド配糖体を含んでいる。漢方では利尿薬に用いたりもする。

一位の材は緻密で光沢があり、木目も美しいことから彫刻材、床柱、鉛筆、家具などに使われる。飛騨の一刀彫りはイチイの材を用い「一位一刀彫り」で知られている。
心の部分、心材を水に浸すと蘇芳色と呼ばれる(黒味を帯びた赤色)の染料が得られる。


木材としての応用だけでなく、イチイが注目されたのは、1969年イチイの仲間タイヘイイチイTaxus brevifolia (Pacific Yew Tree) の樹皮抽出液から、パクリタキセル(タキソール(taxol))というアルカロイドが単離されたことによる。その後パクリタキセルは新規化学構造を有する抗悪性腫瘍剤として卵巣がん、子宮がん、乳がん、胃がん、肺がんなどに有効で、現在、抗がん剤として広く用いられている。

成分
  アルカロイド(タキシン、タキシニン)

参考文献
  ・朝日百科 世界の植物 (朝日新聞社)
  ・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著 (広川書店)


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