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マオウ/フタマタマオウ(二又麻黄)

商品写真
上:武田薬品 京都薬用植物園 
下:京都府立植物園

マオウ(麻黄) Ephedra Herb
フタマタマオウ(二又麻黄)Ephedra distachya Linne
 種子植物門  裸子植物亜門Gymnospermae
 グネツム亜綱 Gnetidae マオウ目 Ephedrales 
    マオウ科 Ephedraceae マオウ属 Ephedra

医薬品、漢方薬原料に必須のマオウ、咳止め薬フェドリンの起原植物

生薬名  :マオウ(麻黄)
利用部分 :地上茎(草質茎)
利用   :漢方処方用薬、伝統・伝承薬原料
      植物起源医薬品(Drugs of plant origin)エフェドリン(Ephedrine)鎮咳薬の原料
名前の由来:噛むとやや渋く苦い。舌を麻痺させ、色が黄緑色であることに由来。
      マオウ属のEphedraはギリシャ語エフェドラー「トクサ」から、
      外見がトクサに似ているので。

日本薬局方のマオウの起源植物との指定ではないが、代表的なマオウにフタマタマオウがある。
内蒙古、モンゴル、新疆をへて中東、トルコ、ギリシャにまで最も広い範囲に分布する。
シナマオウと良く似た形態をしているが、横に這う木質茎から太い茎が出て、ここから数本ずつ枝分かれする。草茎質に分岐が多く、全体の形状が少し異なる。フタマタマオウの栽培は日本でも比較的容易。


野生状態では生育の難しい砂漠などの乾燥地帯に生育するため、水分の蒸発を防ぐよう葉は退化し鱗片状になっている。茎の節を取り囲みツクシの”はかま状”になっているのが葉。本来葉の表面にある気孔や柵状組織は茎の表面にあり、草本性の茎が葉の役割をかねている。さらに水分の蒸発を防ぐため、脂肪性の固い膜、クチクラ層が発達しているため、光や空気の取り込みが非効率的になり、風とうしの悪いところ、水分の多い箇所では生育しにくい。特に他の植物、雑草などが生えると生育が悪くなる。

薬効・効果、成分などは他のマオウと同じで主要成分はエフェドリン、プソイドエフェドリン。
成分のエフェドリンは咳止め薬として多くの風邪薬に含まれる。交感神経興奮作用があるので、スポーツのドーピング検査では禁止薬物に指定されているので、運動選手は注意しなければならない。マオウからエフェドリンを発見、単離したのは長井長義博士。気管支拡張薬にエフェドリン「ナガヰ」があるが、この名は長井長義博士に因んだもの。

外見の類似 トクサ
マオウ属のEphedraの語源はギリシャ語エフェドラー「トクサ」から
   トクサ
   Photo:西宮市北山緑化植物園

長井長義(1845・7〜1929・2)
マオウに含まれるアルカロイドを単離し、エフェドリンと命名したのは長井長義。
阿波蜂須賀藩の典医の家に生まれる。父より本草学の手ほどきを受け、後長崎に留学した。明治政府の第1回海外留学生として13年間ドイツに留学。帰国後、東京帝国大学の教授に就任した。就任後間もなくエフェドリンを発見、その後ボタンピ(牡丹皮)よりペオノール。クジン(苦参)よりマトリン。ロートコン(ロート根)よりアトロピン、ヒヨスチアミン。ソウジュツ(蒼朮)からアトラクチロンなど生薬の有効成分を次々と単離し、近代薬学に貢献した。 第一次日本薬局方の制定にも加わった。日本薬学の開祖と称されている。

参考文献
  ・朝日百科 世界の植物 (朝日新聞社)
  ・第15改正 日本薬局方解説書 (広川書店)
  ・最新生薬学 刈米達夫著 (広川書店)
  ・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著 (広川書店)
  ・生薬単 原島広至著 (株式会社エヌ・ティ)

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