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イチゴ(苺) /フクバイチゴ(福羽苺)

商品写真
Photo:新宿御苑温室

イチゴ(苺) Fragaria ananassa
  フクバイチゴ(福羽苺)
 
 真正双子葉植物 Eudicots>中核真正双子葉植物 Core Eudicots>バラ類 Rosids>マメ群 Fabids
   バラ目 Rosales
     バラ科 Rosales キジムシロ属 Potentillaオランダイチゴ Fragaria)

日本のイチゴの原点 日本初の国産イチゴ

利用部分 :花托の果肉
利用   :生食、加工品
名前の由来:開発者の福羽逸人に因んだ名。


イチゴは多くの人に愛される果物として人気が高い。元々ヨーロッパでは古くから野生種を採取し食用、薬用にと重宝していた。14世紀のフランスではワイルドストロベリーの仲間を栽培していたが果実は極、小さなものであった。今日私たちが味わうイチゴは幾つもの種の交配を行う試行錯誤を得て得られたオランダイチゴを基にしている。

日本でも野生イチゴを食べる習慣はあったようだが、栽培イチゴは江戸末期、天保11年(1840年)オランダ人が長崎にもたらしたのが最初。本格的に導入されるようになったのは明治以降。なかでも明治31年(1898)に新宿御苑で働く福羽逸人によって生み出されたイチゴはフクバイチゴと名づけられ、その後生み出される多くのイチゴの育種親となった。日本のイチゴの基礎を作った名品種である。


福羽逸人(1856〜1921)はフランスで留学勉学中に見聞した早生品種ゼネラル・サンジーの種子をとりよせ、播種苗を育て、その中から選別して作られた品種はそれまでの外来品種に比べ、はるかに大粒で肉質も良く、早生で冬でも実をつけるという特性を持っていた。当初は御苑イチゴ、御料イチゴといわれ皇室にのみ献上される門外不出であったが、その後大正時代には全国の農家へ広まり、昭和30年(1955年)頃には各地で盛んに栽培された。静岡県久能山の石垣栽培は特に有名で促成栽培されたフクバイチゴは海外でも有名でクリスマス用に航空便で輸出されるほどであった。

フクバイチゴは長紡錘形の大きな粒で果色の鮮やかな赤、味も良く促成栽培の高級品として1960年代まで栽培されたが、今日ではフクバイチゴそのものを眼にする機会はめったにないが、その後の多くのイチゴの育種親として、麗紅、秋香、芳玉などの品種を産み出している。

福羽逸人(1856〜1921)
幕末、安政3年に島根県津和野に生まれ、勧農局試験場農場実習生として園芸実習と加工製造に従事。海外へも留学後、新宿御苑内苑局長になり明治、大正期の園芸、農業に貢献し、近代園芸への基礎を築いた。また日本の温室栽培の創始者でもある 。
ツクシ料理が好物であった明治天皇のために明治中頃、新宿御苑でツクシの促成栽培を行い成功している。

新宿御苑
徳川家の譜代大名、内藤清成の江戸屋敷があったところ。元々、東は四谷、西は代々木、南は千駄ケ谷、北は大久保にいたる広大な土地であったそうだ。維新後、そのうちの1部、17万8千坪が皇室のご料地となり野菜、果樹を初め多くの作物の品種の育種改良が行われ新宿御苑から広まった作物はブドウ、モモ、マスクメロンなどがある。中でもフクバイチゴはその代表的なもの。

参考文献
  ・朝日百科 世界の植物 (朝日新聞社) 
  ・食材図典  (小学館)
  ・山野草 ハンドブック 伊沢一男著(主婦の友社)
  ・植物分類表 大場秀章 編著 アボック社


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