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キナ(キナノキ)/アカキナノキ

商品写真
上・中・下:東京都立薬用植物園 アカキナノキの花 
下は全体の木の様子

キナ(キナノキ)
アカキナノキ Cinchona succirubra Pavon et Klotzsch

真正双子葉植物Eudicots>中核真正双子葉植物Core Eudicots>キク類 Asterids>シソ群Lamiids
   リンドウ目Gentianales
     アカネ科 Rubiaceae キナノキ属(キナ属)Cinchona

   マラリアの特効薬 キニーネの原料

生薬名  :キナ皮(サクシルブラ皮)
利用部分 :枝皮、樹皮、根皮
利用   :キニーネ製造原料 医薬品起原植物
名前の由来:インカの人々の間でキナ・キナと呼ばれていたことと、葉柄が赤いことに因む。
      属名Cinchonaは スペイン人でペル提督であったキンコン伯爵の夫人Del Chinchonが
      自身がマラリアに罹患したとき現地に伝承されているキナ皮により治癒、キナ皮を
      ヨーロッパに紹介した。
      リンネがこれに敬意を表しこの樹の学名をキンコーナと名づけた。

キナノキはかってマラリアの特効薬とされていたキニーネを採る南アメリカ特産のキナノキ属Cinchonaの総称。キナノキ属は現在70種ほどが知られるが、コロンビアからエクアドル、ペルーを経由しボリビアにのびるアンデス山脈の東側斜面、海抜1500〜2500mに限定して自生する。

インカでは古来からキナ皮を熱病の治療に用いていた。1638年ペル総督キンコン伯爵の夫人がマラリアに罹患した際、キナ皮で全快し、1640年スペインに帰国した際、欧州に紹介し一躍マラリヤの治療薬として脚光を浴びた。マラリア治療以来、キナと呼ばれていたこの土地固有の言葉からキニーネという言葉がうまれた。
しかし全てのキナノキ属の植物がマラリアに有効ではなく、関係のあるのはその中の2〜3種類のみ。中でもアカキナノキは強靭で痩せ地でも良く育つので現在ではジャワやスマトラなどで栽培される。1852年、オランダ政府は植物学者J.C・ハスカールをペルーに派遣し種子及び種苗を収集させ、自国の支配下にあったジャワ島に移植し栽培に成功した。以来東インド諸島で栽培が行われている。今では世界のキナ皮の90%がジャワ島で生産されている。


樹高25mは超す高木。葉は対生。花は淡いピンク色、筒型で花冠が5裂し枝先に多く集まる。
幹皮をキナ皮と称し、キニーネを主成分とする、アルカロイド5〜8%以上を含む。マラリアの特効薬になるキニーネの他にもキニジン、シンコニン、シンコニジンなど26種のアルカロイドが確認されている。その他キナタンニン、キナ酸、紅色色素を含む。
キナの粉末、煎剤、チンキ剤は苦味健胃薬、強壮薬、解熱薬、鎮痛薬にも利用される。キニジンはキニーネの光学異性体で不整脈治療に使われる。


ボリビアキナノキ Cinchona ledgeriana Moens
キナ皮(レッゼリアナ皮)
   キニーネ製造原料


名前の由来:本種の種子をオランダ政府に提供したイギリス人、George Ledgerに因む

1865年イギリス人レッジャーは使用人のマニュエルと共にリオ・ペニ川の上流の河岸に自生するキニーネ含有量多い優良種の種子を入手し、イギリス政府に提供しようとしたが受け入れられなかったためオランダ政府に売却した。
オランダ政府はジャワ島でこの種の発芽、育苗に成功。このレッジャーがもたらした種はキニーネ含有量が8%以上もある最優秀品種であることが判明。後、品種改良により、含有量が13.5%という優良種も得ている。

この種、レッジャー種はCinchona ledgerianaとなずけられた。キナノキ属を代表する最優良品種であるが、病害に弱く、肥沃な土地でないと育たない、しかも成長は遅いという弱点があったため、病害に強く、痩せ地でも良く育つアカキナノキの2年生苗を台木にレッジャー種の優良母樹の枝先を接木することで優良種を育てた。樹齢20〜25年が採取の適令で、根ごと堀りおこし、枝、茎、根の樹皮を剥ぎ取る。こうして得た樹皮はレッゼリアナ皮といわれ専らキニーネ製造原料として用いられた。

参考文献
  ・朝日百科 世界の植物 (朝日新聞社)
  ・第15改正 日本薬局方解説書(広川書店)
  ・最新生薬学 刈米達夫著(広川書店)
  ・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著(広川書店)
  ・生薬単 原島広至著(株式会社エヌ・ティ・エス)
  ・花と樹の事典 木村陽二郎監修 (柏書房)
  ・植物分類表 大場秀章 編著 (アボック社)

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