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ナツミカン(夏蜜柑)

商品写真
上・中:文京区 小石川植物園 ナツミカンの花と実
下:日本新薬 山科植物資料館

ナツミカン(夏蜜柑)Citrus natsudaidai Hayata 
真正双子葉類Eudicots >中核真正双子葉類Core Eudicots >バラ類Rosids>アオイ群Malvids
  ムクロジ目Sapindales
   ミカン科Rutaceae ミカン属 Citrus

  別名:ナツダイダイ(夏橙)、ナツカン(夏柑)、萩ミカン)

 果皮を圧搾しオレンジ油を採る

生薬名  :キジツ(枳実)
利用部分 :未熟果実
利用   :日本薬局方生薬 胃腸薬の原料
名前の由来:初夏に実るミカンの意味

自然雑種により生じた日本原産の柑橘。ナツカン(夏柑)として知られている。
ナツミカンは宝永年間のはじめ(1704年頃)山口県仙崎の海岸に漂着した果実の種を地元に住む女性、西本於長(おちょう)が撒き育てたのが最初のナツミカンといわれている。原木は現在、根だけが元のまま上は接木だが現存し、国の天然記念物に指定されている。この1本の原木から今日栽培されているナツミカンや多くの品種がつくられた。山口県、萩城下町の風物詩、門構えの土塀からのぞくたわわに実ったナツミカンは明治維新後、禄を離れた士族の生計手段として栽培が奨励され、急速に広まった名残だ。ナツミカンは山口県の県花になっている。
樹性は強く大樹になる。果実はでこぼこして大きく酸味が強い。4月〜6月にかけて熟し初夏の果物として重宝される。生食の他ジュースや果皮をマーマレード、砂糖漬けに加工する。

薬用にするには7月頃、未熟な時期に採取。そのままか或いは半分に輪切りにして天日で乾燥する。キジツ(枳実)という。外観は濃緑褐色〜褐色で艶がなく、油室による多数の窪んだ小点がある。
古いものほど良いとされ、果皮が厚く充実し芳香性で苦味が強いものが良品とされる。また古く表面が黒味をおびているものが良く、新しいものは作用がきついので用いない方が良いと言われている。ダイダイの未熟果実もそのまま、あるいは輪切りにしたものも、キジツ(枳実)として用いる。
精油リモネン、フラボノイド配糖体ナリンギンを含み矯味料、矯臭薬にする


成分
 ・精油:リモネン
 ・フラボノイド配糖体:ヘスペリジン、ナリンギン、
 ・苦味物質:シネフリン

用途
・ナツミカンの落果を利用し、果皮をローラで圧搾し、汁液から油分を分離しオレンジ油を得る。
 香気高いオレンジ油は清涼飲料、シロップ、菓子などの香料エッセンスに配合される。

・漢方処方用薬
漢方では芳香性苦味健胃薬として、胸腹部のつかえ、膨満感を対象に用いられる。瀉下剤とみなされる処方及びその他の処方に配合される。
  ・四逆散  (しぎゃくさん)
  ・温胆湯  (うんたんとう)
  ・大柴胡湯 (だいさいことう)   
  ・小承気湯 (しょうじょうきとう)
  ・滋血潤腸湯(じけつじゅちょうとう)
  ・潤腸湯  (じゅちょうとう)
  ・清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)
  ・竹筎温胆湯(ちくじょうんたんとう)
  ・排膿散  (はいのうさん)
  ・茯苓飲  (ぶくりょういん)
  ・分消飲  (ぶんしょういん)
  ・麻子仁丸 (ましにんがん)
  ・荊芥連翹湯(けいがいれんぎょとう)     など

参考文献
  ・朝日百科 世界の植物 (朝日新聞社)
  ・最新生薬学 刈米達夫著  (広川書店)
  ・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著 (広川書店)
  ・生薬単 原島広至著 (株式会社エヌ・ティ・エス)
  ・日本の樹木(山と渓谷社)
  ・食材図典  (小学館)
  ・食材事典 原田孝子監修 (学研)
  ・植物分類表 大場秀章 編著 (アボック社)

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