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トリカブト(鳥兜)

商品写真
上・中:日本新薬 山科植物資料館 トリカブトの花
下:春日大社 奉納舞楽 伶人の冠、“鳥兜

トリカブト(鳥兜)Aconitum carmichaeli Debeaux  
  真正双子葉植物 Eudicots>基部真正双子葉植物 Basal Eudicots
   キンポウゲ目 Ranunculales
    キンポウゲ科Ranunculaceaeトリカブト属 Aconitum
  
 別名:ハナトリカブト(花鳥兜)

生薬名  :ブシ(附子)、ウズ(烏頭)
利用部位 :塊根
利用   :日本薬局方生薬 漢方処方用薬、
名前の由来:トリカブトは舞楽で奏者がかぶる冠「鳥兜」に花の形が似ていることから。
      生薬名ブシ(附子)は茎が出る母根の周囲の新しい芽、子根のことで「母に附く子」
      の意味。
      乾燥させた母根はカラスの頭のような形からウズ(烏頭)という。
      1年ごとに母根から子根へ入れ変わる。親根は萎縮し子根の方が充実しくるので、
      薬用にはブシ(附子)を用いる。


トリカブト属Aconitum は300種ほど北半球の主として温帯に広く分布する。日本では20数種のトリカブトが野生するが、変異が多く種を区別するのは極めて難しい。多くは林床、林縁、草原に生える。鳥兜型の花は実際は5枚の“ガク“。本当の花弁はがく片に囲まれた内部にある。

現在、生薬のブシ(附子)として用いるトリカブトは日本薬局方ではハナトリカブトAconitum carmichaeli Debeaux 、オクトリカブトAconitum japonicum Thunbergの2種の根茎ときめられている。ハナトリカブトは中国が原産、花が大きく、花の間隔が狭く、まとまっているので観賞用の切花にもされる。

秋 美しいカブト状で紫色の花を咲かせる可憐な花からは想像しがたいが、トリカブトは有名な
毒草
でこれにまつわる逸話は多い。古来から多くの民族が矢毒に用いてきた。近年、鹿の食害により多くの草木が食い荒らされ、激減したり絶滅したりしているがトリカブトは鹿が食べないので、かえってこのような単一の植物を目にする機会が多くなっている。

全草に、特に根にアルカロイドのアコニチン、メサコニチン、イサコニチンを含み猛毒である。しかし“毒を変じて薬となす”の譬えのように、専門的技術で減毒加工すると、薬用になる。
漢方の要薬として鎮痛、抗リウマチ、強心、強壮、新陳代謝機能亢進などの目的で各種の漢方薬に配合される。


成分
  ・ブシジエステルアルカロイド:アコニチン、ジェサコニチン、ヒパコニチン、メサコニチン
  ・アナシン系:アナシン、コブシン、イグナビン、ソンゴリン
  ・強心成分 ヒゲナミン(ハイゲナミン)、コリネイン

漢方処方例
  ・八味地黄丸  (はちみじおうがん) 
  ・真武湯、   (しんぶとう) 
  ・牛車腎気丸  (ごしゃじんきがん)
  ・四逆湯    (しぎゃくとう)  
  ・麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう) 
  ・葛根加朮附湯 (かっこんかじゅつぶとう)      など


トリカブトの名前の由来になった雅楽の伶人(奏者)の冠、“鳥兜”
雅楽の怜人が “鳥兜“の冠をかぶり、舞い、春日大社に舞楽を奉納する。
鳥兜とは雅楽の伶人(奏者)がかぶっている錦製の鳳凰を象った冠で、花を横から見た形が この “鳥兜“の冠に似ることに由来してトリカブトの名がつく。


参考文献
  ・朝日百科 世界の植物 (朝日新聞社)
  ・第15改正 日本薬局方解説書 (広川書店)
  ・最新生薬学 刈米達夫著 (広川書店)
  ・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著 (広川書店)
  ・生薬単 原島広至著 (株式会社エヌ・ティ・エス)
  ・山渓名前図鑑 野草の名前 秋・冬 高橋勝雄著 (山と渓谷社)

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